東京大学らの研究グループは、理化学研究所と共同でトポロジカル半金属のキャリア制御手法を新たに確立した。
東京大学大学院工学系研究科の西早辰一大学院生と打田正輝助教、川粼雅司教授らの研究グループは2018年5月、理化学研究所創発物性科学研究センターの田口康二郎チームリーダーらによる研究グループと共同で、トポロジカル半金属のキャリア制御手法を新たに確立したと発表した。同時に、化学置換による電子構造の変化を観測することにも成功した。
トポロジカル物質は、金属や半導体、絶縁体など従来の分類に属しない物質群で、その母物質にあたるのがトポロジカル半金属である。電子やスピンの非散逸伝導を示すことから、低消費電力デバイスを実現するための材料として注目されている。2014年には、電子構造にエネルギーギャップのないトポロジカル半金属が発見された。
打田氏らは、トポロジカル半金属の「Cd3As2」薄膜を高品質に作成する手法を2017年に開発した。さらに、打田氏と西早氏らはトランジスター構造での電界効果によって、トポロジカル半金属のキャリアを制御できることに着目し、研究を行ってきた。
研究グループは、Cd3As2および、化学置換を行った(Cd1-xZnx)3As2について、パルスレーザー堆積法を用いて高品質な薄膜を作製し、電気抵抗を測定した。
具体的には、Cd3As2薄膜に対し少量のZn置換を行うことで電子濃度の低下を実現している。また、SrTiO3単結晶基板をゲート絶縁体に用いたバックゲート構造とし、これに電界を加えることで電子過多から正孔過多の領域まで、キャリア濃度を広範に制御することが可能になったという。
今回の研究成果により、高品質な(Cd1-xZnx)3As2薄膜は、最大30000cm2/Vsという極めて高い電子移動度を持ち、低キャリア濃度の領域で、量子ホール効果を観測した。また、Zn置換量に応じて電子構造が変化することも分かった。
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