台湾のEtron Technologyの創設者であり、チェアマン兼CEO(最高経営責任者)を務めるNicky Lu氏は、以前から「Heterogeneous Integration(以下、HI)」を提唱してきた。「HI」とは、どのようなものなのだろうか。
FacebookやGoogle、Amazonが、独自チップの開発によって世界を支配する方向へと前進している現在、半導体業界は今後25年の間に、一体どのように変化していくのだろうか。しかしある意味、そのような未来は既に今、われわれの目の前に存在しているといえる。ビッグデータ解析やAI(人工知能)、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)、自動運転車など、まだ完全な形ではないながらも、既に登場しているためだ。
それでも、ほとんどの半導体メーカーは、このような素晴らしい新世界のことを想像さえできずにいる。まして、関連性を確保する上での対応が必要な発明についてなど、なおさらだ。現在、メーカー各社を悩ませている問題は、業界が今後進んで行く方向が、非常に不透明であるという点だ。多くの半導体メーカー(IntelやSamsung Electronicsなどの巨大企業を除く)にとって、ムーアの法則が経済的に行き詰まりつつある中、方向転換することができるような場所は、他にあるのだろうか。
米半導体工業会(SIA:Semiconductor Industry Association)は2016年7月に、これまで業界全体に広く普及してきた国際半導体技術ロードマップ(ITRS:International Technology Roadmap for Semiconductor)を廃止すると発表した。ITRSを終了させるというSIAの決断から、ムーアの法則が単に減速しているだけではないということを、業界全体が理解していると分かる。業界では、コネクテッドワールドの実現に向けて加速していく中、従来と未来との間の研究ギャップを定義するための新しいツールや地図、プログラムなどが求められているのだ。
ここで登場するのが、台湾のEtron Technologyの創設者であり、チェアマン兼CEO(最高経営責任者)を務めるNicky Lu氏だ。
Lu氏は以前から、「Heterogeneous Integration(以下、HI)」を提唱してきた。同氏は、「半導体業界は最終的に、微細化に対する強迫観念から脱却しなければならない。微細化にとらわれない成長を後押ししていくためには、異なる技術をヘテロジニアスに統合するという創造力が不可欠である。このHIは、SoC(System on Chip)や、SiP(Systems-in-Package)、MCM(Multi-Chip Module)などのことを意味しているわけではない。HIとは、SoCやDRAM、フラッシュメモリ、A-D変換、D-A変換、パワーマネジメント、セキュリティなど、さまざまな種類のシリコンダイと連携させた、システム設計やアルゴリズム、ソフトウェアなどを含む、全体的に統合されたアプローチのことである」と説明する。
半導体業界はこれまで、SiPの分野において大きな進展を遂げてきた。しかしLu氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「2018年現在、シリコンダイだけでなく非シリコン材料も実際に統合することが可能な、さらに高度なHIが求められているのではないだろうか」と述べている。
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