さて、この「後発的な学習によって作られた興奮」が、冒頭の話、「ボーイズラブ(BL)は好きか? 今、好きでないなら、今後、後発的に好きになれる可能性はあると思うか?」につながる訳です。
私は、嫁さんと長女に対して『私たちは、今まで存在しなかった対象に対するものに対して、学習によって後発的に「興奮」を作り出すことができるか』という、思考実験を仕掛けてみたのです。
嫁さんは「愛という概念のない世界に限定すれば、後発的な人工的な愛(興奮)の発生の可能性はある」といい、長女は「マジョリティーが是認する世界であれば、後発的な愛(興奮)が受入可能なプラットフォームは作れる」と言いました。
似たような話で、「結婚相手の多くは、(オフィス内などの)半径3m以内の異性である」という説があります(参考:他社のサイトに移行します)。
これは、頻繁に視野に入る異性が、結婚の対象になる、という点では、AEは近いように思えるのですが、しかし、「猫」と同じ範ちゅうで考えるのであれば、別段、近くにいようとも遠くにいようとも、あまり関係がないとも言えそうです。
まあ、これは単なる思考実験ですので、あまり真剣に考える必要はないのですが、AI技術のメカニズムを、逆に人間の側に反映させて考える試みは、これは、これで、なかなか楽しいものなのです。
さて、ここから真面目な話ですが、CNNにしてもAEにしても、これが、すごい発想に基づく、素晴らしい効果を発揮するAI技術であることに疑いはありません。私は、これらの技術と、その開発者に跪く(ひざまずく)ことにやぶさかではありません。
しかし ―― です。
これって、一体どこに、どういう風に使えば良いのか、と考えると、首をかしげてしまうのです。
CNNもAEも、既存のニューラルネットワークの技術を援用している点には変わりはありません。
しかし、第2次AIブームでつまずいた、多層ネットワーク全体での学習をキッパリと諦め、逆に少層(3層)ネットワークにぶった切ってバラバラに学習するようにして、加えて、学習前の前処理に膨大な工夫を施すという、思いきったパラダイムシフトを行ったという点において、「すごい」の一言に尽きます。
特に、CNNは画像にはやたらめったら強いです(そもそも、そういう目的に作られているからです)が、それ以外にうまく援用できるのかというと、私が調べた限り、他分野での「すごい」成功事例はありません。
また、AEに至っても、「猫」と「セレブの顔」以外の顕著な応用例の報告が見当りません。
私は、CNNもAEも、このような対象物の認識や判断ができるだけでも、十分に成功である、と思いますし、研究員としてまたエンジニアとして、私はその立場を支持します。
―― しかし、「世界」はそう思ってくれるしょうか?
そういう「世界」は、CNNやAEのようなすごい技術を着想し、開発を成し遂げた、研究者やエンジニアのことを、きちんと評価してくれているのでしょうか?
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