また、設備投資では、次世代パワー半導体の1つであるSiC(炭化ケイ素)を用いたパワー半導体製品に向けても「年間数億ユーロ規模の投資を実施する」(Wawer氏)。「現状、SiCパワー半導体の生産は、4インチウエハーが主体だが、今後の投資は6インチウエハーラインへの投資を強化する。6インチウエハーでのSiCパワーデバイスで一定規模の生産は2019年から立ち上がる見通し」とした。
SiCパワー半導体製品については、現在、ダイオード、トランジスタともにSiCデバイスで構成するフルSiCモジュールの1200V耐圧品の提供を開始した段階で、今後、650V耐圧品、1700V耐圧品、3300V耐圧品を開発し、ラインアップを拡充していく計画。
SiCによるMOSFET(=SiC-MOSFET)の製品化は、Infineonよりも競合他社が先行したため従来のシリコン(Si)によるIGBTなどと異なり、シェア争いで後れを取っている。「SiCダイオードでは先行し、高いシェアを得ているが、SiC-MOSFETの製品化は競合よりも遅れたのは事実だ。だが、Infineonは、トレンチゲートを用いたSiC-MOSFETの製品化では先行した。競合他社がプレーナ型SiC-MOSFETからトレンチゲート型SiC-MOSFETに切り替えている中で、優位な位置にある。加えて、Siパワーデバイスで培ったモジュール技術もベースにあり、SiC領域でも強みが発揮できる。迅速に、SiC-MOSFETでも、SiCダイオード同様のシェアを獲得できると確信している。SiCパワー半導体でもSiパワー半導体と同様シェアを獲得していくことがSiCにおける目標になっている」とした。
好調なInfineonのパワー半導体事業だが、日本国内に限っては、世界市場に比べシェアが低い状態が続いている。「パワー半導体の競合は、三菱電機、富士電機、ロームといった日本のメーカー」とWawer氏というように、Infineonにとって厳しい市場であるため、低迷が続いてきた。
こうした日本市場の状況を打開するため、Infineonでは2017年から「555(ゴーゴーゴー)ストラテジー」と呼ぶ戦略を、ドイツ本社のIPC事業部と日本法人が連携して策定、実行している。555ストラテジーとは、5つのターゲット顧客グループと5つのターゲットアプリケーションを定め、5つの施策を通じ、日本市場でのパワー半導体売り上げの成長を図るもので、「日本でも、5年後には世界パワー半導体市場と同じ水準のシェアを獲得する」(日本法人IPC事業本部長 針田靖久氏)を目標にしている。
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