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NEC史上最年少で主席研究員になった天才がもたらした、起死回生のチャンスイノベーションは日本を救うのか(27)(1/3 ページ)

1990年代、シリコンバレーでのコーポレートベンチャリング活動で、うまくいったとは言えないNEC。そこからは、コーポレートベンチャリングに対しては守りの経営が長く続いた。だが、NEC史上最年少で主席研究員となった、ある人物がそれを大きく変えようとしている。

» 2018年07月13日 11時30分 公開
[石井正純(AZCA)EE Times Japan]

「イノベーションは日本を救うのか 〜シリコンバレー最前線に見るヒント〜」バックナンバー

 NECが、1990年代の半ば、「Convergence Partners」というCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を設立したことは、既に本連載の第25回「NECとパナの実例で読み解く、コーポレートベンチャリングの難しさ」で取り上げた通りだ。NECは、その時は思ったように成果を出せず、同社のその後については筆者も気になっていた。

 実は最近、NECはシリコンバレーで新しい試みを始めている。

 そのキーパーソンとなるのが、NECの藤巻遼平氏だ。

NEC史上最年少で主席研究員に

 NECは2018年4月、データ分析ツールの開発および販売、コンサルティングを事業とする新会社「dotData, Inc.(以下、dotData)」を設立すると発表した(関連記事:「NEC、シリコンバレーにAIデータ分析の新会社を設立」)。

 dotData自体は同年2月に設立しており、そのCEO(最高経営責任者)に就任したのが、藤巻氏である。1000人以上いる研究員の中でたった6人しかいない主席研究員にNEC史上最年少で抜てきされ、NECのAI(人工知能)技術群「NEC the WISE」に搭載されている予測分析自動化技術を開発した人物だ。機械学習アルゴリズムの専門家でもある。筆者は2018年6月に、シリコンバレーで藤巻氏本人に直接会う機会があったが、非常に優秀で、大変に面白い人物であった。

藤巻氏(左)と筆者。dotDataのオフィスにて

 dotDataが手掛けるのは、「データ分析の自動化を行うソリューション(以下、データ分析自動化ソリューションとする)」の開発と販売だ。「エンタープライズデータサイエンス」という分野になる。電力会社を例に挙げると、発電の状態や電力の消費に関するデータをセンサーで収集して分析し、「ことしの夏は電力消費が大幅に増加することが予想されるので、どう対処すべきか」といったことを検討できるようになる。

 もともと藤巻氏はNECの中央研究所で、上記のような、エンタープライズデータサイエンス関連の研究開発に従事していた。

 藤巻氏は2011年、データ分析自動化ソリューションの海外展開を図るべく、シリコンバレーに異動したものの、すぐに同ソリューション関連の業務に着手できたわけではなかった。日本にいたときに開発に着手していた「異種混合学習」という技術が、NEC社内で予想外にブレークし、そちらの事業化に手を取られていたのである。

 藤巻氏はシリコンバレーにいながら、異種混合学習の事業化に3年ほど携わった。2015年になって事業側の体制が整い、藤巻氏の手から離れた。

 それを機に藤巻氏は、NEC本社から3人の同僚をシリコンバレーに呼び寄せ、データ分析自動化ソリューションの本格的な開発を進めることになったのである。

 ただ、異種混合学習の事業化を間に挟めたことは、藤巻氏自身にとってもよい経験になったそうだ。3年間の間に、エンタープライズデータサイエンスについての理解も深まり、初期段階のデータ分析自動化ソリューションの改善点も見えてきたという。

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