2xnm世代のCMOSロジック製造技術によって記憶容量が40Mビット(5Mバイト)の埋め込みMRAMマクロを試作した結果を、前後編で報告する。前編では、高温動作での読み出し電圧マージンの確保と、低温動作での書き込み電圧マージンの維持について紹介する。
半導体デバイス技術に関する国際会議「IEDM」では、カンファレンスの前日に「ショートコース(Short Course)」と呼ぶ1日間のセミナーを開催している。2017年12月に開催されたIEDMでは、「Memories for the future: device, technologies, and architecture(将来に向けたメモリデバイスの技術とアーキテクチャ)」と題したショートコースが開催された。このショートコースでは6本の技術講座が午前から午後にかけて実施された。
その中から、埋め込みメモリ技術(CMOSロジックとメモリを同じシリコンダイに混載する技術)に関する講座「Embedded MRAM Technology for IoT & Automotive(IoTと自動車に向けた埋め込みMRAM技術)」が興味深かったので、その概要をシリーズでお届けしている。講演者はシリコンファウンダリー(半導体製造請負サービス企業)大手のGLOBALFOUNDRIESでeNVMフェローをつとめるDanny P. Shum氏である。
なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
前回は、SRAM代替用MRAMとフラッシュメモリ代替用MRAMでは、磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunneling Junction)の特性がどのように違うのかを説明した。今回と次回は、2xnm世代のCMOSロジック製造技術によって記憶容量が40Mビット(5Mバイト)の埋め込みMRAMマクロを試作した結果を前後編でご報告する。
試作した40Mビットの埋め込みMRAMマクロの設計仕様は、以下の通りである。製造技術は300mmウェハーを使った2xnm世代のCMOSロジック技術。読み出しアクセス時間は20ナノ秒〜25ナノ秒、書き込みパルス幅は50ナノ秒〜200ナノ秒、電源電圧はコア電圧が1.0V、IO電圧が1.8Vである。MTJは金属配線の第5層と第6層の間に形成した。MTJのサイズは55nm〜75nm、メモリセル面積(設計寸法換算)は40F2〜60F2となっている。
メモリセルアレイは、2.5Mビットのサブアレイ(コアスライス)が16個である。コアスライスは、コアストリップと呼ぶ20本の細長いセルアレイに分割されている。ワード線ドライバを中央に挟んで、コアストリップを左右に10本ずつレイアウトした。
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