図2は、現在主流の3スマートフォンの内部の基本配置構造である。Appleの「iPhone X」は二枚重ねの基板や2基電池を有しており、若干構造は異なるが、図2右の「iPhone 8」と基本配置は同じである。
外観が似ているスマートフォンだが、さまざまな理由から内部の配置は各社各様になっている。ただ、中国スマートフォンは、Huawei製もVIVO製やOPPO製も、多くは同じ基本配置構造を持つ。その理由は、特許の問題、製造手順(分解を多数やっていると製造の順番も逆工程から予想できる)、部品の共有化(サプライチェーン)などによる。
OPPO R15も典型的な中国スマートフォンの内部構造であった。分解の手順は電池の取り外し、サブ基板、メイン基板の取り外しと非常に簡単である(特殊ネジが使われることも少ないので中国スマートフォンは、分解そのものは煩わしくない)。一方iPhoneは内部にも多くの部位に市販されていない特殊なネジが使われており、分解の難易度は高い。
図3は、OPPO R15からメイン基板を取り外し、基板上にカバーされる金属シールドを取り外した状態とメインのプロセッサを拡大した様子である。
基板は右上辺がカットされた形状で、このカットされた部分にデュアルカメラが装着される。カメラが設置される下部にはデュアルSIMカードスロットがあり、その左側にプロセッサとメモリ(DRAM 6GBとストレージ128GBが積層。1つのパッケージに2種メモリが搭載される)が並んでいる。
基板の裏面には通信用の各種チップ群(トランシーバー、パワーアンプ)、モーションセンサーなどが並ぶ。プロセッサと通信用チップを基板の表裏に配置し、特性の異なるものを少しでも分離配置する点も中国スマートフォンの共通の特徴だ。AppleやSamsung Electronicsはこの部分でも異なるノウハウを持っている。
OPPOとVIVOは親会社が同じなので、チップの配置位置や順番まで同じことは理解できるが、中国スマートフォンには同じような配置のものが多い。ここから、“中国スマートフォン”というエコシステムが出来上がっていて、共通化(協調領域)と競争領域がすみ分けられていることが伺える。チップの配置、基板の形状を共通化(もしくは類似化)することで、共通化できる部位、部品が増え、コスト効率、設計効率が著しく上がるからだ。
OPPO R15には台湾MediaTekの新プラットフォーム「Helio P60」が採用されている。Helio P60は2018年スペイン・バルセロナで開催された「MWC(Mobile World Congress) 2018」で展示された新製品だ。AI演算を行うマルチコア演算器を搭載し、8コアのCPUやGPU、カメラISP(Image Signal Processor)、LTEモデムなどスマートフォンに必要な機能を1チップ化した統合プロセッサとなっている。
Helio P60は、最先端プロセスの一つである12nmで製造されている。多くのプロセッサ(Apple 「A11」や「Snapdragon835」「同845」、「KIRIN970」など)が10nmプロセスを用いる中、モバイル系プロセッサとしては初めて12nmを活用した。ちなみにこの12nmで製造されるチップにはNVIDIAの現在最上位のGPU「GV100」があり、世界最速のスーパーコンピュータ米オークリッジに設置される「Summit」に使われている。
OPPO R15で使われるチップセットはHelio P60だが、プロセッサにはHelioとは記載されず、MediaTekでのプロセッサ型名「MT6771」が刻印されている。「MT67XX」は、LTEモデムを有するMediaTekのモバイル向けプロセッサの型名で、前モデルの「Helio X30」は「MT6799」である。基板上には、プラットフォームとしてその他にもMediaTekのチップが並んでいる。
OPPO R15はスーパーミドルハイと呼べるスペックのHelio P60が活用されるが、MediaTekにはハイエンド向けのプラットフォームHelio X30もある。こちらは最先端プロセスの10nmを用いている。
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