図4は、Helio P60のプラットフォーム(左)とHelio X30(右)のチップセットの差を示している。
スーパーミドルハイのHelio P60は、AIコアという新機能を有した上でチップ数を最小限に抑えた4チップ構成となっている。一方、ハイエンドのHelio X30はキメの細かい電源制御やトラッキングICなども持っているために、倍の8チップ構成となっている。いずれも優れたチップセットだが、点数が多いことから、コストが若干高くついてしまう。Helio P60はその点でもスマートフォンに必要な骨格機能を4チップに収め、コストを最小化しつつも、ハイエンドに匹敵する機能を収めているわけだ。
またハイエンド市場は、自前化が著しく進んでおり、Appleは自前でA11プロセッサを有し、Samsungは「Exynos」プラットフォームを推進、中国メーカーとしてはHuaweiが自前のプラットフォーム「Kirin」を持っている。OPPO/VIVOやXiaomiなど、自前でチップを持たないメーカーへの供給(ZTEも含む)ではスーパーミドルハイが主戦場になっており、少しでもチップ点数が少なく、コスト効率のよいプラットフォームが重要になっている。
図5は、若干映像を加工してぼかしているが(鮮明写真は有償)、Helio P60とHelio X30のプロセッサのチップ開封を行い、内部の構造が見えるように配線層剥離を行ったものである。ともにCPU、GPUに加え、LTEモデム、カメラISP、ビデオ機能などを持つ統合チップである。
上位のHelio X30は3階層のCPUを持ち、2+4+4の構成で処理内容に応じて性能の異なるCPUにデータを振り分け、電力の最適化を行っている。Helio X30は、2015年に発表された「世界初」(MediaTek)となる3階層CPU「Helio X20」の後継チップとして、2017年にリリースされた製品である。CPUは、3種の異なるコアで階層化されている。
一方のHelio P60ではCPUは2階層に抑えられ、面積は全体的に小さい。チップサイズも小さくすることでウエハー1枚からの取得数を増やしてコストを削減し、スーパーミドルハイ市場での競争力を高めている。P60はX30に比べて面積は二回り小さい。
現在多くのモバイル系プロセッサが機能を増加させ、面積を拡大し続けている(より多くの機能を搭載できる7nmプロセスの開発が急がれているのは、それが理由だ)。そんな中、あえて機能を削り、面積を縮小させながらも、AIなどの新たな機能を取り込み、スーパーミドルハイにふさわしいチップを送り出したMediaTekは、注目に値するだろう。
アジアのスマートフォン市場で最大規模のシェアを持つOPPOらの今後の動向とともに、MediaTekの次なる一手も気になるところだ。
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