CC2620、CC2630、CC2640、CC2650の4チップは、通信仕様は異なるがベースは同じだ。表1は4チップを開封した様子である。チップ上の型名からサイズ、開発年(西暦)、パッド(PAD)位置などの比較を行った。細部には若干の差があるもののチップは原則同じものであった。なお、細部を変える場合にもベースを同じにしていればマスクと呼ばれる回路パターンを一部だけ用意すればいいので少ない費用で開発が可能になる。
同じベースシリコンを使うことでチップ開発費は最小化され、マスク、回路、パッケージなどを共有化できる。シリコンのサイズが異なれば、治工具、パッケージなども変えねばならない。だが、4つのチップはサイズが同じであるなど共通項目が多いので、4チップを別々に作ることに比べて、極端にコストを抑制することができているのだ。図2はCC2630とCC2650の外部との接続を行うパッドと呼ばれる場所のワイヤ接続痕跡を拡大したもの。同じシリコンでも接続するパッドを変えることで、対応する機能が変わるようになっている。なおパッドのチップ内側にある小さな接触痕跡はテスト工程で各ピンのチェックを行ったときのものである。
上記のような工夫で同じシリコンを4つの仕様に使い分け、膨大なコストがかかるシリコンの種類を増やすということを避けているわけだ。シリコン種を増やすことは、明らかにコストアップになる。新規の機能や明らかな価値のある回路は、今後もシリコンをどんどん作っていくべきだが、似たような仕様のチップを作る場合には、シリコン種を増やさずに同じシリコンを活用して、“面”を形成するような製品群をそろえた方が開発期間も費用も小さくて済む。本連載の前回の記事で紹介したボードPC「Raspberry Pi」に搭載されるチップも同じく同一シリコンによる“面”を形成していた。米国メーカー製のチップを年間100種ほど開封して内部を調査しているが、費用をかけて開封しても、同じシリコンに出会うことが多く、正直少しがっかりした気分になることも多い。その一方で、どの米国半導体メーカーも、費用のかかるシリコン種は最小にするための工夫が数多くなされていると感心する。
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