日系半導体ベンダーの雄として、ディスクリートからシステムLSIまで豊富な車載ラインアップをそろえる東芝デバイス&ストレージ。同社は2017年10月に、車載半導体事業の拡大に向けて「車載戦略部」を新設した。同部署で部長を務める早貸由起氏は、これからの車載事業戦略をどのように描いているのか――。
技術革新が続く自動車業界。エレクトロニクスが深く関わる自動車の「電動化」「自動運転」「コネクティビティ」といったキーワードは、自動車を取り巻くトレンドとして既に見慣れたものとなっており、今後これまで以上に自動車業界とエレクトロニクス業界は接近していくだろう。
EE Times Japanでは「エレクトロニクスメーカーが展望する自動車の未来」と題し、各社の車載事業を統括するトップに対してインタビューを行っている。
日系半導体ベンダーの雄として、ディスクリートからシステムLSIまで豊富な車載ラインアップをそろえる東芝デバイス&ストレージ。同社は2017年10月に、車載半導体事業の拡大に向けて「車載戦略部」を新設した。同部署で部長を務める早貸由起氏は、これからの車載事業戦略をどのように描いているのか――。
EE Times Japan編集部(以下、EETJ) 車載戦略部の新設など、東芝デバイス&ストレージでは車載事業に注力されています。現在、そして未来の車載市場をどう見ていますか。
早貸氏 グローバルで自動車生産台数が増加する中、2016年から2024年までのCAGR(年平均成長率)は2.2%になるというデータがある。一方で、車載半導体市場はそれ以上の伸びを見せ、2016年から2024年にかけてCAGRは4.5%に達すると予測されている。
これは、自動車の安全性向上や環境規制への対応などでエレクトロニクスが必要な領域が拡大しているためで、自動車1台当たりに搭載される半導体の量が増加傾向にあることは言わずもがなだろう。
ここで、環境・安全・情報の観点から自動車を取り巻く状況を整理する。環境面では、COP21(第21回気候変動枠組条約締約国会議)で採択されたパリ協定を念頭に置く必要がある。このパリ協定の順守には、EV(電気自動車)化を推し進めることが非常に重要だ。
安全面では、自動運転の実現がカギとなる。2020年に開催される東京五輪では一部区域で実証実験が行われるなど、自動運転の時代が本格的に到来する。直近では高速道路など狭い限定領域でのみ自動運転がサポートされると考えられるが、技術開発が進むにつれ限定領域が拡大され、地方の幹線道路や都市の一般道でも自動運転が機能するようになると、渋滞緩和や交通事故の減少、物流効率化など多様なメリットが生まれる。
情報はコネクテッドとも言い換えることができるが、ECUファームウェアのOTA(Over the Air)は今後、OEM(自動車メーカー)各社が導入し、普及する機能だろう。その他、AppleやGoogleなど、ITの巨人と呼ばれる企業が自動運転分野にこぞって参入していることや、カーシェアリングやライドシェアリングのような新しい自動車の利用法が台頭していることも忘れてはならない。
これまで自動車産業は非常にトラディショナルな業界で、限られたOEMしか自動車を開発することができなかった。現在の自動車業界では水平分業が進み、新たなプレーヤーが登場しつつある。
EETJ 自動車産業の変革が進む中、車載戦略部の立ち位置を教えてください。
早貸氏 車載向け製品は、東芝デバイス&ストレージの製品ラインアップでも大きなウェイトを占めている。従来では、車載向けパワー製品はディスクリートを取り扱う事業部で、車載向けコントローラー製品はミックスドシグナルを取り扱う事業部で商品企画や営業を行っていた。2017年10月より新設した車載戦略部では、これら事業部の車載向け製品を一括して取り扱う組織となる。
車載戦略部では、東芝デバイス&ストレージが抱える車載向け製品を1つの窓口で顧客へ提案する。また、全社として統一した次世代車載製品の戦略を立てることや、各事業部の技術をまとめ上げたディスクリートとミックスドシグナルの密結合製品を展開する。
部品単体の供給で終わるのではなく、システムソリューションの提案など未来の自動車に求められているものを提供したいと考えているためだ。
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