GLOBALFOUNDRIES(GF)は、7nmプロセスの開発を中止してから初めての年次カンファレンスの中で、ある新規顧客が、GFの22nm FD-SOI(完全空乏化型シリコン・オン・インシュレータ)プロセス「22FDX」を用いて、少なくとも3種類のディープラーニング用組み込みチップを製造していることを明らかにした。
GLOBALFOUNDRIES(以下、GF)は、7nmプロセスの開発を中止してから初めての年次カンファレンスの中で、既存ノードに対する強化について説明した。加えて、ある新規顧客が、GFの22nm FD-SOI(完全空乏化型シリコン・オン・インシュレータ)プロセス「22FDX」を用いて、少なくとも3種類のディープラーニング用組み込みチップを製造していることを明らかにした。
GFによれば、22nm FD-SOIプロセスでは、12nmおよび14nm FinFETとプレーナーCMOSプロセスに比べ、面積を10〜20%縮小しつつ、性能と電力効率を向上するという。競合先であるTSMCも、ムーアの法則が鈍化する中、最先端ノードを強化する計画を発表しているが、GFが掲げた目標はTSMCのものとほぼ一致する。
Synapticsは、低消費電力型のニューラルネットワーキング向けアクセラレーターをGFの22FDXでテープアウトしたと発表した。このアクセラレーターには、匿名のライセンサーからライセンス供与されたAI(人工知能)技術が用いられてて、テラフロップス級の性能を実現するという。Synapticsは、22nmノードを用いた2つ目のチップとして2018年中に音声/ビデオチップ、3つ目のチップとして2019年初めにAR(拡張現実)/VR(仮想現実)チップをそれぞれテープアウトする計画だ。
Synapticsがタッチスクリーン用チップ市場で確固たる地位にあり、年間50万枚のウエハーを購入していることを踏まえれば、GFのFD-SOIで製造するチップの数はわずかなものだろう。しかし、SynapticsがGFの22nm FD-SOIプロセスを採用したという動きは、業界で最も注目度が高い分野(AIやAR/VRなど)において、22nm FD-SOIがよい位置についていることの証ではないだろうか。
SynapticsのCEO(最高経営責任者)であるRick Bergman氏は、「われわれは大々的なレビューを実施したが、その結果から、22FDXがAI対応のIoT(モノのインターネット)製品に非常に適していることが明らかになった」と述べ、その理由として22nmが28nmのプレーナーCMOSプロセスよりも高性能な上に消費電力が少ないことと、FinFETよりコストが低いことを挙げた。
GFのCEOを務めるTom Caufield氏は、2018年3月にCEOに任命された後、Robert Bosch、Infineon Technologies、NXP Semiconductorsといった欧州のチップベンダーを訪問したことで道が開けたと述べた。これらのチップベンダーは、「最先端ノードを適用することのメリットに疑問を持った時には、一歩引いて見てみる」という姿勢を取ってくれたという。
Caufield氏は、年次カンファレンスの基調講演で「当社の顧客の大半は、10nmよりも先のプロセスを使用する考えには固執していない」としながらも、(中止を決定した7nm FinFETプロセスの見込み客であったAMDとIBMからは)「GFの最先端プロセスの開発は常に後れを取っているし、生産能力が少な過ぎる」と言われたことを明らかにした。
2017年、GFの売上高は60億米ドルに達した。だが、7nmプロセスで月に3万枚のウエハーを処理できる生産設備を整えるには30億米ドル(しかもそのうち15億米ドルは外部から資金を調達する必要があった)を投資しなくてはならなかった。
現在、GFの22FDXは、さまざまな市場において55のデザインウィンを獲得している。22FDXの後継プロセスである12nm FD-SOI(「12FDX」)では、目標とする性能の90%まで達成できていると、GFのCTO(最高技術責任者)であるGary Patton氏は述べている。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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