本連載で以前「車載半導体市場の現状と今後のゆくえ」について述べた。昨今の自動車業界が自動運転や電動化などで注目度が高まっていること、これに伴って車載半導体に求められる内容が変わりつつあること、などについて言及した。その中で、より注目すべき点として、自動車メーカー自身のビジネスモデルも変曲点を迎えつつあること、その要因がエレクトロニクス業界との融合であることを忘れてはならない。今回は、そちらについて述べてみたいと思う。
本連載の第2回で「車載半導体市場の現状と今後のゆくえ」について述べた。昨今の自動車業界が自動運転や電動化などで注目度が高まっていること、これに伴って車載半導体に求められる内容が変わりつつあること、などについて言及した。その中で、より注目すべき点として、自動車メーカー自身のビジネスモデルも変曲点を迎えつつあること、その要因がエレクトロニクス業界との融合であることを忘れてはならない。今回は、そちらについて述べてみたいと思う。
今後の自動車業界を語る上で、最も頻度高く登場する単語は「CASE」だろう。「C」はConnected(通信)、「A」はAutonomous(自動運転)、「S」はShared(共有)、「E」はElectric(電動化)を指している。特に「A」と「E」は話題として取り上げられることが多く、車載半導体市場への影響も大きい。だが、「CASE」に含まれる4つの項目は相互に関与しながら推移することが予測され、この流れが自動車メーカーのビジネスモデルを大きく変える可能性が高いのである。
まず「C」についてだ。見た目にあまり大きな変化をもたらさないが、実はこれこそが自動車とエレクトロニクスの融合を顕著に示す要素である。
一つの事例として、2018年4月から欧州連合(EU)で販売される新車にはeCall(イーコール)機能の搭載が義務付けられている。車両が事故を起こした時に緊急コールセンターへ自動的に事故の発生を知らせる機能で、消防や救急、警察がすぐに駆け付けられる仕組みになっている。eCallでは、セルラー通信モジュールとGPSやGNSSといった衛星測位システムの搭載が不可欠となり、センターとクルマは常につながった状態(Connected)となる。
eCallの他に、自動運転に不可欠な地図情報、共有サービスに不可欠なクルマの状況(位置情報や使用状況)など、CASEに必要な機能の多くはConnectedがなければ実現できないのが現状である。
これらの情報をやり取りするセンター側から見れば、クルマはIoT端末の一つという位置付けで、単体で存在するという考え方ではなく、大規模なIoTシステムの一部としてさまざまな情報通信の役割を果たす存在と見ることができる。従来のように、クルマとしての性能やスペックだけが重要視されるのではなく、どのような通信機能が使えて、どのようなサービスが実現されるのか、という新しい評価軸も重要視されるわけだ。エレクトロニクス業界との融合が、クルマの位置付けを変え、クルマに求められる機能を変えることになる。無線通信機器市場で最大の実績を誇るQualcommが車載分野に乗り込んでくるのは、必然的な流れと言って良いだろう。
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