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「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

自動車メーカーのビジネスモデルは今後どうなる?大山聡の業界スコープ(10)(2/3 ページ)

» 2018年10月11日 11時11分 公開

A:実現の鍵はAIプロセッサと地図情報

 次に「A」について。ADAS(Advanced Driver Assistance System, 先進運転支援システム)の機能は、車載センサーやそのデータを取り込むシステムの機能向上によって、着実に進歩しているが、究極の目的である「完全自動運転」を実現するためには、AIプロセッサの搭載が必要となる。現時点ではNVIDIAのAIプロセッサを搭載して実証実験を行う事例が多く、各社とも2020年前後の自動運転実現を目指しているようだが、実際の普及にはもう少し時間がかかりそうだ。

画像はイメージです

 まず、自動運転を実現するためには、高精度な3次元地図情報のサポートが欠かせない。ドイツのHERE、オランダのTomTomなどが地図提供者として有名だが、全てのユーザーが同じ情報を共有し合うことが理想の地図情報において、どこまでが協調領域でどこからが競合領域なのか。ゼンリンなど日系企業が食い込む余地はあるのか。気になるところだ。自動運転に必要な地図情報は膨大なデータ量になるが、情報の更新も頻繁に発生する。これらの情報はConnected機能を使って取り込むわけだが、「今この瞬間」に必要な地図情報は常に手元になければならない。数分の1秒の操作遅延が事故につながる危険性があるので、地図情報とセンサーからのリアルタイム情報を駆使しながら、目的地まで安全走行を実現するAIプロセッサには非常に高度な処理能力が求められよう。

S:さまざまな企業が事業化

 次に「S」についてだ。クルマは平均的に走行時間が1割、駐車場滞在時間が9割、などと言われており、もっと有効にクルマを活用するために共有システムを運用すべきだ、という主張は極めて理に叶っている。そしてそれは、情報をネットで共有することで実現可能となるのだ。Connectedのところで述べたように、クルマをIoT端末の一つとして考えると、端末の個別情報(どこにあるのか、利用可能か、など)がシステムで管理されてユーザーに開示できるため、「CASE」の中では最も実現ハードルが低い項目として、さまざまな企業がクルマを共有するサービスを事業化し始めている。日本でもタイムズカープラス、オリックスカーシェアなどのサービスが利用者を増やしつつあるが、自動車メーカーにとって新車が売りにくくなる、という大きなデメリットがある。この流れにあらがうことは困難と考えたのか、自動車メーカーの中には自分からこのサービスを積極的に提供しようとする動きが見られるのだ。

 この点について少し整理すると、Connected Carの普及が進むことは間違いなく、この流れがクルマの共有(いわゆるRide Share)に拍車をかけることは十分に想定できる。さまざまなサービス提供会社がこのサービスを拡大させて自動車メーカーを振り回す前に、自動車メーカーが自分でこのサービスを立ち上げることで、ユーザー情報を管理しようとする戦略は一考に値するだろう。

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