残り間もない2018年だが、ことしも、5Gにとっては楽しみな年になるだろう。3GPPがRelease 15を完成させることに加えて、消費者市場への5Gの早期導入も予定されている。
MWC 2018では、中国のHuaweiが5G基地局のデモを行い、Samsung Electronicsが28GHz帯をサポートする5G NR基地局を使用して相互運用性デバイス試験(IODT)を実演した。さらに、Qualcommは、EricssonとNokiaの基地局を使用して28GHz対応端末に対するIODTデモを行っている。
こうしたデモは、機器ベンダーがハードウェアの導入準備をほとんど完了していることを示している。中でもQualcommは、2019年での5G商業化に向けて取り組みを進めていると、同社のWebサイトに大々的に記載している。
5Gの提供が開始され、普及していけば、5Gを中心に構築された多数の新しい技術やアプリケーションも登場するようになる。遅延と容量の規定を正式な仕様に追加する5G独自の意向により、ほんの数年前には未来のものに思えたアプリケーションが実現可能になるだろう。
それを示す絶好の例がVRだ。完全なVR体験を得る上で、考慮しなければならない重要事項がある。
まず、ユーザーが探索する仮想世界を360度見渡すことができる高精細ビューが必要だ。これは、カメラが常に360度の高精細動画を撮影しなければならないことを意味している。撮影した動画は、カメラのある場所から基地局にストリーミングされ、さらにエンドユーザーにストリーミングされなければならない。5Gで実現できる高いデータレートは、このタスクを容易に達成し、複数のユーザーに同時にストリーミングするための十分な処理能力を提供する。
もう1つの非常に重要な側面が遅延だ。VRヘッドセットを装着したユーザーが振り向いた場合、そのユーザーの周辺環境(仮想環境)も1ミリ秒以下で回転する必要がある。遅延が1ミリ秒より大きい場合、脳がこの遅延を検出し、重度の吐き気を感じる事態になりかねない。5Gにおける処理能力の向上と1ミリ秒未満の遅延仕様の組み合わせにより、VRをセルラーネットワーク上で実現できるようになるのである。
VRは数年前から何らかの形で存在していたが、セルラーネットワーク上でVRを実現できるようになれば、新しいVRアプリケーションの実現につながる。
有力なアプリケーションの一つがスポーツイベントだ。例えば、フィールドにいる選手の視点からアメリカンフットボールの試合を体験することを想像してみてほしい。あるいは、50ヤードラインに仮想的に立ち、周囲で行われる全てのアクションをライブで見ることができるとしたらどうだろう。こうした技術を紹介する小規模のデモが2018年2月に韓国で開催された平昌・冬季五輪で実施された。100台のカメラがスケートリンクに設置され、撮影されたデータが、会場付近に設けられた「5Gテクノロジーパビリオン」にライブストリーミングされたのだ。パビリオンにいる人々はVRヘッドセットを装着し、まるで氷上にいるようにスケートの試合を体験できたのだ。
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