これまでの100倍ものデバイス数をネットワークに接続できる5Gの能力は、IoT/IIoTの飛躍も可能にする。IoTは既に普及し始めていて、インターネットに接続できるデバイスは市場に増え続けている。消費者にとっては、便利なものから興味深いもの、本当に奇妙なものまでさまざまな製品があるだろう。
業界にとって、IIoTはスマートファクトリーを実現するための新たな機能を提供する。製造工場内の全てのマシンやデバイスについて、状態や効率を常にモニタリングし、レポートできれば、経年変化した機器の故障を未然に防ぐことができるようになることが期待されている。さらに、IIoTを拡張現実(AR)、機械学習などのAI(人工知能)と組み合わせることで、現場の技術者はARヘッドセットを通して、またはタブレット上で、マシンの状態や情報を見ることができ、AIによって問題を迅速に診断できるようになるだろう。5Gは未来の製造をより速く、より安く、より安全に行える可能性を秘めている。
5Gが実現する未来として最も注目を集め、最も期待されるアプリケーションの一つとして、自律走行車が挙げられる。現在、自律的に動作する車両は、さまざまなセンサーと写真やビデオの処理を組み合わせて走行している。将来の自動運転車も多くのセンサーを装備し、センサーからのデータを処理する能力が必要だが、自動運転車を大規模に成功させるためには車両通信を追加する必要がある。
簡単に言うと、車両同士が互いに通信する方法が必要だ。車両間通信は、道路や環境条件に関するデータの他、停止や左折の予測などのルート情報を共有するために使用される。さらに、車両と、携帯基地局や、通過する車両に道路状況や環境データを送信できるスマート街灯やスマート標識といったスマートデバイスを含む、さまざまな種類のデバイスとの間で通信を行う必要がある。つまりは、V2X(Vehicle to Everything)通信だ。
5Gの遅延仕様は、車両が情報を取得する上で非常に重要だ。例えば、通信リンクの遅延が大き過ぎるために、路上の物体に反応したブレーキ動作が間に合わない場合、乗員の負傷や死亡につながる可能性がある。
V2Xには高信頼性通信も必須だ。5Gの高いデータ処理能力もまた、V2Xで重要な役割を果たす。車両は信号機の地点で、近くの基地局から現在の位置に関する情報をアップロードしたりダウンロードしたりできる。これにより、車両はセンサーデータを収集するが、その処理は基地局に任せるか、クラウドで行うことも可能だ。処理技術の向上に伴い、移動通信インフラに対する更新も行えるため、古い車両もハードウェアを変更する必要なく、これらの更新を利用できる。
3GPPの現在のリビジョンにはV2Xの仕様は含まれていないが、5Gは日々進化している。図1に示したスケジュールでは、2019年末に「Release 16」が予定されていて、これが5G NRの第2段階となる。Release 16で詳細に検討される仕様項目として、現在のところ、集中型バックホール処理のためのIAB(Integrated Access Backhaul)、モバイル通信における無免許帯域の共有に関する課題への対処、V2Xなどが挙がっている。3GPPはRelease 16で、これらを含む多数のトピックに取り組むことを目指している。5Gは2018年後半から2019年にかけて商用製品への展開が開始されるが、その後も5Gの研究調査は継続される。
5G規格が確定し、5G対応デバイスが市場に出回るようになると、5Gが社会に及ぼす影響というものを、ますます感じるようになるだろう。5Gはエンターテインメントからスマートシティーまで、日常生活の多くの場面で欠かせない技術となるに違いない。しかもそれは、ワイヤレス技術の新しくエキサイティングな時代の始まりにすぎないのである。
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