図4は、iPhone XSと同時に発売されたiPhone XS Maxとの処理基板の比較である。通信基板がiPhone XS Maxではやや大きくなっているが、構造は同じ、通信基板に重ねられてコンピュータ基板が配置されている。一方で今回は写真を掲載しないが、10月26日に発売されたiPhone XRは2層構造の基板ではなく、iPhone8以前のバー形状だった。2層構造を採用しなかったのは、ディスプレイ部の厚さに起因しているものだと思われる。
iPhone XSはDialog Semiconductor製の電源制御ICを用い、iPhone XS Maxはチップパッケージ上にAppleのロゴマークが搭載されるApple開発の電源制御ICが搭載されている。同じA12を制御するものだ。Apple自身が電源ICを開発したことで、いよいよ「プロセッサ+電源」という基本チップセットを手中に収めたことになる!
パッケージだけでは判断できるはずもなく、テカナリエでは両チップを開封し、サイズや内部構造の比較解析も行った。さらにiPhone XSではもう一つのチップ同士の比較ができた。
2017年のiPhone XでLTEモデムとして採用されたQualcommの「MDM9655」と、iPhone XSで採用されたIntelのモデム「9955」の比較である。ともに600Mビット/秒(bps)の通信速度のモデムで、14nmプロセスで製造されている。上記の電源IC、LTEモデムは文字通り、同一比較のできるものだ。同じ機能を同じプロセス世代で作っているからだ。どちらのチップが大きいか小さいかを比較するだけでもコスト差、インプリ力の差、果ては方式の差も明確になる。
同様にテカナリエでは同時期に発売された「Apple Watch Series4」の全チップ開封も行い、LTEモデムのチップ比較などを行った。ここでは言及しないが、同じ仕様、同じ世代のプロセスを用いていても中身は全く異なるものもある。各社の実力がチップを開封し比較すれば確実に見極められるのだ。iPhone XSはこうした差分を浮き彫りするものであった。詳細は機会あれば取り上げたい。
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ルネサス エレクトロニクスや米国のスタートアップなど半導体メーカーにて2015年まで30年間にわたって半導体開発やマーケット活動に従事した。さまざまな応用の中で求められる半導体について、豊富な知見と経験を持っている。現在は、半導体、基板および、それらを搭載する電気製品、工業製品、装置類などの調査・解析、修復・再生などを手掛けるテカナリエの代表取締役兼上席アナリスト。テカナリエは設計コンサルタントや人材育成なども行っている。
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