2018年11月1日、パナソニックが創業100周年を記念して開催したユーザーイベント「CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018」において、同社専務執行役員の宮部義幸氏が「100年企業のイノベーション」と題して講演を実施。次の100年に向けたパナソニックの取り組みについて説明した。
2018年11月1日、パナソニックが創業100周年を記念して開催したユーザーイベント「CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018」において、同社専務執行役員の宮部義幸氏が「100年企業のイノベーション」と題して講演を実施。次の100年に向けたパナソニックの取り組みについて説明した。
宮部氏は、社会が「Society 3.0/工業化社会」を経て、「Society 4.0/情報化社会」へと移り変わり、今後、「Society 5.0/超スマート社会」の時代が到来すると定義。「大量生産、大量消費により、ありとあらゆるものが安価に、安定的に、手に入ることが可能になったSociety 3.0/工業化社会の実現に対し、パナソニックは大きく貢献し、パナソニック自体も大きくなった」と述べる。一方で、情報が簡単に入手でき価値を持つようになったSociety 4.0/情報化社会については「われわれ製造業にとって、あまり得意ではない領域。ハードよりもソフト、モノよりも体験に価値が見いだされる社会であり、われわれ製造業はこの20〜30年間、苦戦を強いられてきたのが実情」と述べる。
情報化社会での敗北を素直に認めつつも、今後、到来するSociety 5.0/超スマート社会での巻き返しを期する。「Society 5.0はサイバーフィジカル、仮想空間と現実空間が融合し価値を生み出す社会。いわゆるインターネットとリアルが結合する時代になる。リアルの世界で培った強みを生かせる。それにプラスして新たな価値観を身に着け、“新しい価値”を提供できれば、この20〜30年間の停滞を打破できる」という。
Society 5.0での巻き返しのカギを握る“新しい価値”とは、パナソニックがその実現に大きく寄与した“工業化社会”が“失わせてしまった価値”。大量生産、大量消費によるスーパーや量販店の台頭の影で、減っていった個人商店が提供していたような価値だ。
個人商店は、御用聞き営業などで顧客のニーズを把握し、顧客の困り事を時に先回りして解決するような価値を提供してきた。電器店も、その最たる例だ。そうした個人商店の多くが姿を消し、失われてしまった価値を、テクノロジーにより提供するのがSociety 5.0であり、宮部氏は「人間中心社会への回帰」と表現する。「欲しいと思ったモノがちょうど良いタイミングで届く。裏では、最先端技術がフル稼働するが、人と人のやり取りをベースに温かみのあるサービスが提供される。そうした社会を目指さなければならない」(宮部氏)
しかしながら、そうしたSociety 5.0の時代に、パナソニックが再び王者に返り咲くには、サイバーフィジカルの“サイバー”での大きな後れを解消する必要がある。そこで、宮部氏は「Society 5.0の時代に対応するには、私たち自身の仕事の進め方、企業の在り方を大きく変えなければならない。そして、それは、決して簡単な挑戦ではない。大きく変わるための前提は、私たち自身のこれまでのやり方は全く通用しないと思い込むことだ。パナソニックのこれまでのやり方は、安定した大量生産を実現するためにプロセスを定め、そのプロセスを順守してきた。しかし、これからはフレキシブルに物事を決めていかなければならない」と言う。
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