ゲート電極とコンタクトホールのリークを無くすためには、なるべく保護膜のSiNを厚く成膜したい。ところが、SiNが厚過ぎると、コンタクトホールの底面積が小さくなり、コンタクト抵抗が増大するという問題が起きる。
コンタクト抵抗増大を避けるには、コンタクトホールの底面積を大きくすることが有効であり、そのためにはゲート電極を保護するSiN膜を薄くしたい。ところが、薄くし過ぎると、ゲート電極とコンタクトホールの間でリークが起きやすくなる。
要するに、コンタクト抵抗とリークはトレードオフの関係にあり、両者を同時に満足するのが困難である。しかし、トランジスタの高集積化のためには、なるべくトランジスタ間の距離を縮めたいという要求がある。
この問題の解決には、なるべくSiN膜を削らないSiO2エッチング、つまり、SiNに対する選択比が高いSiO2エッチング技術が必要である。そして、この厄介な問題を、SiO2のALEが解決したのである。
米Lam ResearchがSACプロセスにALEを適用したときの実験結果を図8に示す。
図8-1では、コンタクトホールを開口する際、ゲート電極の保護膜SiNが露出する横方向の面積を“Landing area”、保護膜が縦方向に削れる寸法を”Corner Loss“と定義している。
図8-1の左図のように、Landing areaが大きい場合は、Corner Lossは小さくなるが、コンタクトホールの底面積が小さくなってしまう。一方、図8-1の右図のように、Landing areaが小さい場合は、コンタクトホールの底面積を大きくできるが、Corner Lossが大きくなってしまう。
望ましくは、Landing areaもCorner Lossも小さくし、コンタクトホールの底面積を大きくしたいが、Landing areaとCorner Lossはトレードオフの関係にある。そのため、図8-2に示すように、Conventionalなドライエッチングでは、その解決が困難だった。
ところが、ALEを用いた場合、Conventionalなエッチングに比べて、Landing areaもCorner Lossも同時に小さくできることが分かった。これは、ALEにより、SiNに対する高選択SiO2エッチングが可能になったことを意味している。
その結果、同じデバイス構造なら、コンタクトホールの底面積を大きくすることができる。または、Conventionalなドライエッチングを用いる場合よりも、トランジスタ間を狭くし、集積度を増大することが可能になる。
このLam Researchの技術は、先端ロジック半導体メーカーに使われた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.