シリコンのALEの事例を、図5を用いて説明する。
1)ウエット洗浄を行って、シリコン表面をクリーンにする。
2)ラジカルとして、塩素をシリコン表面に吸着させる。
3)塩素をパージし、ステップを切り替える。
4)Arイオンを照射すると、反応性イオンエッチングにより、SiCl4が揮発する。
5)シリコン原子一層分の除去が完了する。
このとき、シリコンなどの導電膜では、2)のラジカル吸着過程で、塩素が原子一層分しか吸着しない。この現象を、セルフリミッティングという。この効果により、Arイオンを照射すると、シリコン原子が一層分だけエッチングされる。
一方、SiO2などの絶縁膜では、2)でCFxラジカルを吸着させるが、セルフリミットがかからず、時間とともにCFxラジカルがどんどん堆積してしまう。そのため、SiO2のALEにおいては、CFxラジカルの吸着の時間などを、精密に制御しなくてはならない。
導電膜と絶縁膜では、このようにセルフリミッティングに大きな違いがあり、実用化するには導電膜のALEの方がやりやすいと思われていた。ところが、実際に量産適用されたのは、セルフリミッティングがかからないSiO2のALEだった。そのアプリケーションは、先端ロジック半導体のセルフアラインコンタクト(Self-Aligned Contact、SAC)という工程だった。
トランジスタを形成した後、密集したトランジスタ間に、次のようなプロセスフローでコンタクトホールを形成する(図6)。
1)トランジスタを形成する。
2)SiO2膜を成膜し、トランジスタを埋め込む。
3)CMPによりSiO2膜を平たん化する。
4)リソグラフィにより、孔のレジストパターンを形成する。
5)ドライエッチングにより、コンタクトホールを開口する。
6)レジストを除去し、孔底を洗浄する。
7)タングステン(W)を成膜する。
8)不要なWを除去する。これで、Wで埋め込まれたコンタクトホールが完成する。
ところが、4)の孔のレジストパターン形成の際、レジストパターンの中心が、二つのトランジスタの中心に合うとは限らない(図7)。というより、現実には、必ず、合わせずれが起きる。
SACとは、このような合わせずれが起きても、ゲート電極をSiNが保護することにより、コンタクトホールのドライエッチングの際に、ゲート電極が露出しないように工夫したプロセスである。
もし、ゲート電極が露出すると、Wで埋め込まれたコンタクトホールとゲート電極が、電気的に接触(つまりリーク)してしまい、トランジスタ動作に不具合をきたすことになる。
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