ミニマルファブ推進機構は、「SEMICON Japan 2018」で、「ミニマルファブ、先端へ」をキャッチフレーズに、新開発のミニマルファブ向け製造装置や、ミニマルファブ装置で製作した実チップなどを展示した。
ミニマルファブ推進機構は、「SEMICON Japan 2018」(2018年12月12〜14日、東京ビッグサイト)で、「ミニマルファブ、先端へ」をキャッチフレーズに、電子ビーム露光装置やイオン注入装置など、新たに開発したミニマルファブ向け製造装置や、ミニマルファブ装置で製作した実チップなどを展示した。また、海外での展開についてもパネルで紹介した。
ミニマルファブは、直径0.5インチ(12.5mm)のウエハーを用いて半導体チップを製造することが可能なシステム。一般的な大規模半導体工場では、直径12インチ(300mm)のシリコンウエハーを用い、最先端プロセスでプロセッサやメモリを大量生産することができるが、その投資額は5000億円にも上る。
これに対してミニマルファブは、局所クリーン化生産システムにより、大規模なクリーンルームを建設する必要がなく、スペースや設備環境が限られた研究室などでも比較的容易に半導体チップを製造することができる。投資額も5億〜10億円で済むという。
ブースには新規開発した4製品の他、合計約70台のミニマル生産システム装置群を、半導体製造工程に沿って展示した。開発品は、打ち込み電圧が最大30kVのフジ・インバック製イオン注入装置、描画性能が最小線幅250nm以下で、加速電圧が−0.5〜−15kV、アライメント精度±0.6μm以下のTCK製の電子ビーム露光装置、磁気ミラー閉じ込めプラズマを利用し、400℃以下の低温で高品位の膜を形成できるコーテック製CVD装置および、ウエット装置に薬液を供給するアクア製薬液サーバである。
ミニマルファブの製造装置を用いた半導体チップの開発や試作も本格化する。ブースでは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)らが開発した、TiNゲートSOI CMOSプロセスを用いた4ビットALU(Arithmetic Logic Unit)の試作チップなどが展示された。4ビットALUはゲート長が4μm、2層Al配線技術を用い、2×2.5mmのチップサイズに1338個のトランジスタが実装されている。
開発品は、AlゲートバルクCMOSプロセスを用いた従来品に比べて、チャネルシフト量を5分の1に低減した。また、ゲート酸化膜を6nm厚としたことでドレイン電流は300倍に増大し駆動力が向上した。しきい値電圧のばらつきは10分の1に低減できたという。
ALUの他、圧力センサーなど実用レベルのMEMSデバイスも、ミニマルファブの製造装置を用いて試作されている。
ブースでは、ミニマルファブの海外展開についてもパネルで紹介した。その1つが台湾における事業展開である。台湾はこれまで、最先端プロセスを用いて大量生産する半導体ファウンドリービジネスで世界をけん引してきた。その台湾が、IoT(モノのインターネット)デバイスなど少量多品種生産への対応をにらみ、ミニマルファブ導入へ高い関心を示しているという。
具体的には、台湾のMIRDC(金属工業研究発展中心)がミニマルファブ導入に向けてプロジェクトを立ち上げた。MIRDCにミニマルMEMS試作ラインの設置を計画している。ミニマルファブ推進機構は、台湾におけるプロジェクトに協力することで合意している。これ以外にも、米国やインド、マレーシアなどの研究機関や大学に対して、ミニマルファブを活用した半導体チップの製造を提案している。
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