PCBにパワーMOSFETを埋め込む、Infineonの車載用デバイス : electronica 2018 (2/2 ページ)
現在、Infineonの売上高で最大の比率を占めているのがオートモーティブ事業だ。同事業は売上高全体の42%(2018年度第4四半期)を占める。Strategy Analyticsが2018年4月に発表したデータによれば、車載用パワー半導体の市場シェアは26%でトップに立っている。
InfineonのAutomotive High Power Vice President & General Managerを務めるStephan Zizala氏は、好調の要因について、まずはゼロエミッションに向け電気自動車(EV)の普及が加速していることを挙げる。さらに、CO2 排出規則を満たすべく、電源の48V化も、Infineonの追い風になるとする。
左=Infineonのオートモーティブ事業の業績/電気自動車(EV)で使用される半導体の量(金額)の予測 出典:Infineon(クリックで拡大)
Zizala氏は、「こうした動きによって、自動車で使われる半導体の量が年々増加している。車載用半導体について、300V以上の高電圧から300V以下の低電圧まで、ディスクリートやモジュールなど完全なポートフォリオを持っているInfineonにとって、大きなビジネスチャンスになる」と述べる。
その中で注目すべきは、低電圧のパワーデバイスに採用する技術「Chip Embedding」である。その名が示す通り、パワーMOSFETのチップをPCB内に埋め込む技術で、InfineonがドイツのPCBメーカーであるSchweizer Electronicと共同開発中のものだ。「スペースが制約されている中、高い電力密度を実現したいケースに非常に有効だ。チップとともにCu(銅)も埋め込み、効率よく熱を拡散する。つまり、デバイスの発熱を抑えることができる」とZizala氏は説明する。
自動車の電動化に向けた、Infineonの車載用パワーデバイスのラインアップ。右端が「Chip Embedding」技術である 出典:Infineon(クリックで拡大)
Zizala氏によれば、Chip Embedding技術を採用したパワーデバイスの市場投入は2020年になる見込みだという。「製造においてはプロセス技術を変更する必要があるが、このデバイスには大きな期待を寄せている」(Zizala氏)
InfineonのStephan Zizala氏
もっと積極姿勢を見せてほしい日系パワー半導体メーカー
今回は、パワーデバイス市場について述べてみたいと思う。というのも、2018年11月26日、デンソーがInfineon Technologies(以下、Infineon)に出資すると発表したことが、筆者としては非常に気になったからである。
パワエレで力を付ける中国、SiCで目立つ地元企業の台頭
中国・上海で、2018年6月26〜28日の3日間にわたりパワーエレクトロニクスの展示会「PCIM Asia 2018」が開催された。三菱電機の中国法人は「5〜10年前では考えられないほど市場が伸びて、プレイヤーも増えてきている」と語る。SiC(シリコンカーバイド)パワーデバイスを手掛けるメーカーも増えてきた。PCIM Asia 2018の様子をレポートする。
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ロームとGaN Systems(ガンシステムズ)は2018年6月5日、GaN(窒化ガリウム)パワーデバイス事業における協業を開始したと発表した。
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