Infineon Technologiesは、ドイツの新興企業であるSiltectraを買収した。1枚のウエハーで従来の2倍のチップを形成できるという、SiC(炭化ケイ素)ウエハーの分割技術「Cold Split」の獲得が狙い。Siltectraの買収価格は、1億2400万ユーロ(約139百万米ドル)。
Infineon Technologiesは、ドイツの新興企業であるSiltectraを買収した。1枚のウエハーを水平方向にスライスし、2枚のウエハーに分割する技術「Cold Split」の獲得が狙い。これにより、チップの取れ高が従来の2倍になる。Siltectraの買収価格は、1億2400万ユーロ(約139百万米ドル)。
Siltectraは2010年に設立され、50件以上の特許ポートフォリオを有する。同社は、一般的な切断技術と比べて材料の損失が極めて小さい、結晶材料の分割技術を開発した。同技術は、今後数年で急速に需要が増加すると予想されるSiC(炭化ケイ素)にも適用できるという。
SiC製品は現在、非常に効率的でコンパクトなソーラーインバーターに使用されている。SiCは将来的に、エレクトロモビリティにおいてますます重要な役割を担うと予想される。Cold Split技術は、ドイツのドレスデンにあるSiltectraの既存工場とオーストリアのフィラッハにあるInfineonの工場で導入される。量産への移行は、今後5年以内に完了する見通しだという。
Infineon TechnologiesでCEO(最高経営責任者)を務めるReinhard Ploss氏は、「今回の買収によって、当社の卓越した製品ポートフォリオを新材料のSiCで拡張することができる。SiltectraのCold Split技術と革新的な技術力によって、当社のシステムに関する知見と薄型ウェハー技術に関する独自のノウハウが、理想的な形で補完されることを期待している」と述べている。さらに、Ploss氏は、「SiCウエハーの数を増やすことで、SiC製品の増強をより簡単に行えるようになる。SiC製品は特に、再生可能エネルギーの更なる拡大と、電気自動車(EV)のドライブトレインへのSiCの適用の増加に対処するために需要が増加すると予想されている」と説明している。
Infineonは、「Cold Split技術は、特に長い目で見た場合に、SiC製品の供給の確保に役立つ。将来的には、ブール分割やSiC以外の材料への適用など、Cold Split技術の用途が広がる可能性も期待される」と述べている。
Siltectraは2018年前半に、SiCプロセス技術を拡張する特許を発表した。同技術は、ベンダー固有のSiC結晶成長プロセスでありながら、材料の損失を100μm以下に抑えてウェハーを分割できる。SiC材料の損失を削減できれば、パワーデバイスや他のIC用の基板の導入を増やすことができる。これまでは、同技術のコストがSiC製品の急速な普及を阻んでいたが、Siltectraの技術によってコスト削減を実現することで、EVや5G技術などの幅広い用途でSiCを迅速に展開することが可能になる。
【翻訳:滝本麻貴 、編集:EE Times Japan】
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