下の図4には2つの情報を掲載した。左はNSITEXEの発表したDFPの資料の一部である。2019年1月の展示会「オートモーティブワールド2019」に出展されるものだ。すでにシリコン化されており、2019年春にはさまざまな評価が始まるようだ。実際に開発者にインタビューさせていただき、内容も十分に理解させていただいた。一方で今回は詳細を掲載しないが同様にルネサスのDRPもチップを入手しており、今後本コラムの中で紹介していきたい。
図4右は、半導体メーカーの最小加工寸法をグラフ化したものである(4陣営[=TSMC、Intel、Samsung、GLOBALFOUNDRIES]のデータのうち、TSMCを掲載した)。加工寸法にはトランジスタを形成するゲートピッチと配線ピッチの大きく2つがある。面積なので縦横を掛け合わせた2乗になる。7nmまではほぼ前プロセス比で半分弱の面積を実現できるものになっている。
現在市販されるAI機能付きプロセッサの多くはAI演算器のトータルTOPS値を明らかにしている。解析によってAI機能を実現するIPの面積も弊社では明らかにした。
しかしチップに適応されるプロセスは現時点ではマチマチだ。28nmのものもあれば、14nmも12nmもある。AppleのA12 BIONICやHiSiliconのKIRIN980は7nmを活用する。プロセスが微細化されれば集積密度があがる。トランジスタ同士は近傍化されオンオフに必要なエネルギーも軽減される。面積が小さくなることで行き来する配線長も短くなり充放電電力が減る。さらに微細化によるトランジスタ長の削減で電圧も下がる。電力はプロセスの進化のたびに15〜40%ほど削減される。
さらに面積削減はピッチの2乗を目安に削減できる。少なくとも7nmまではムーアの法則は健在というわけだ。面積は減る、電力も減る、性能は上がるのだ!! テカナリエでは5nmの設計データも入手しているが、現時点での計算では5nmも従来ペースの進化は健在だろう!!
図5は、図4右のプロセスルールを用い、実チップのAI機能IPの面積、TOPS値、プロセスを求めて7nmプロセスで製造した場合の1TOPS当たりの面積(mm2/TOPS)を算出した結果である。1TOPS当たりの消費電力(W/TOPS)で表現する場合もあることは十分に理解しているが、電力は周波数と面積、電圧、活性化率などさまざまな要因があり、テカナリエでは2019年の課題として求めていくことにしている。
半導体(のみならずエレクトロニクス)では面積と消費電力は比例関係にある。そこでmm2/TOPSを図5に掲載した。mm2/TOPSが小さいことは、電力も小さく、コストも少ないことを意味する。
AppleやNVIDIAでは専用アクセラレーターを加えた新チップでは、2017年までのチップに比べて面積効率が4〜7倍改善されたことが明らかになった。数値性能(0.8TOPS⇒5TOPS:Apple)も重要だがコストに関与する面積で見ることが、今後ますます重要になると考える。2019年も片っ端からAI機能付きチップを入手しmm2/TOPSを求めていく予定だ。
さて、図5の両端に日本発のAI機能IP(AIだけに特化したわけでなく幅広いアプリケーションにも対応している)の現時点での値を掲載した。ルネサスのDRP性能(RZシリーズから測長)は現時点では若干、面積効率が悪い。公表されるロードマップの通り開発が進めば、面積効率は著しく向上するのだろう。一方NSITEXEのDFPは新しいIPとして開発されたもので世界トップクラスとなっている!
プラットフォームとしての成熟と、さらなる進化に期待したい!!
一過性のブームではなく今や廉価版スマホプラットフォームにも搭載されるAIアクセラレーター。今後ID関連やさまざまな生態認証や車載ADAS(先進運転支援システム)、セキュリティ応用など幅広い分野に広がっていく可能性が高い。2019年の各メーカーの重点課題の一つになっている。電子機器/デバイスの内部を調査する側でも最重点課題だ。2019年も次々とユニークなプロセッサが登場することは間違いない。引き続き、あらゆるチップを開封して判断していくつもりだ。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
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ルネサス エレクトロニクスや米国のスタートアップなど半導体メーカーにて2015年まで30年間にわたって半導体開発やマーケット活動に従事した。さまざまな応用の中で求められる半導体について、豊富な知見と経験を持っている。現在は、半導体、基板および、それらを搭載する電気製品、工業製品、装置類などの調査・解析、修復・再生などを手掛けるテカナリエの代表取締役兼上席アナリスト。テカナリエは設計コンサルタントや人材育成なども行っている。
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