東北大学は、温度差で発電し蓄電機能も併せ持つ、新たな原理の「熱電バッテリー」を開発した。IoT(モノのインターネット)用センサーなどのバッテリーフリーを可能とする技術として期待される。
東北大学マイクロシステム融合研究開発センターおよび大学院工学研究科機械機能創成専攻の小野崇人教授らによる研究グループは2019年1月、温度差で発電し蓄電機能も併せ持つ、新たな原理の「熱電バッテリー」を開発したと発表した。IoT(モノのインターネット)用センサーなどのバッテリーフリーを可能とする技術として期待される。
新たに開発した熱電バッテリーは、ナノメートルサイズのチャネル(貫通穴)における熱浸透流を活用して発電する。蓄電は、温度差がないと電解液中のイオンによりナノチャネルが閉じてしまうことを利用するという。
一般的に、ナノチャネル内部では、イオンが移動することにより電気二重層と呼ばれるイオン層が形成される。チャネルの寸法が小さいと、電気二重層により電気は流れない。一方、素子の両端に温度差が生じると、ナノチャネル内の電気二重層の厚さ分布が変わる。そして圧力(熱キャピラリー力)により、低温側から高温側へとプラスイオンによる熱浸透流が生じるという。
今回試作した熱電バッテリーは、電解液を入れた容器(セル)の両端に金属電極を設けた。セル内部は、直径10nmのナノチャネルが高密度に形成された薄膜で2つに分割された構造となっている。
研究グループは、この素子の両端に温度差を与え、その時の温度差と出力電圧あるいは出力密度を測定した。この結果、30℃の温度差において、250μW/cm2の出力密度を得られることが分かった。また、出力を開放にして電荷の保持特性も評価した。そうしたところ、電荷は48時間以上経過した後で6割以上も保持されることが判明した。
これらの実験結果から、発電性能と発電容量は既存の固体熱電素子と同等以上であることを確認した。研究グループは今後、さらに大きな出力と蓄電容量の実現を目指すとともに、2022年にはIoTセンサー向けサンプル品の供給を始める予定だ。
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