2018年12月13日にCEO(最高経営責任者)に就任したImagination Technologies(以下、Imagination)のRon Black氏は、グラフィックスIP(Intellectual Property)ベンダーとしてなすべきことを鋭敏に察知している。
2018年12月13日にCEO(最高経営責任者)に就任したImagination Technologies(以下、Imagination)のRon Black氏は、グラフィックスIP(Intellectual Property)ベンダーとしてなすべきことを鋭敏に察知している。
Black氏は、最大かつ最重要顧客であるAppleを失うことになり混乱のさなかにあるImaginationのかじを取ることになった。
同氏は、EE Timesのインタビューの中で、「Imaginationは、低電力、高性能グラフィックスのアイコン的企業だ。私は、過去1年半の間に当社が失った地位を取り戻すつもりだ」と語った。
一部の情報とは裏腹に、Black氏は、「システムで大量のデータが生成されることを考えると、当社のグラフィックス技術に対する必要性はこれまで以上に高まっており、5G(第5世代移動通信)の展開によってさらなる成長が期待される」と主張する。同氏は、「グラフィックスは、“データ”を“情報に基づいた洞察”に変換する技術だ。データの活用が増えるにつれ、Imaginationの技術の重要性が高まると確信している」と述べている。
Imaginationは、「モバイル機器、特にAI(人工知能)関連で画像処理技術の重要性が増す」と主張する。例えば、同社のグラフィックスIPコア「PowerVR Series3NX」を活用すれば、ある商品の写真をスマートフォンで撮影して画像検索することで、同じ製品を数秒で購入できるようになるという。
Black氏は、「見落とされがちなことだが、コネクティビティはビジネスにとって重要な要素である」とも述べている。同氏がImaginationのCEOに就任した当時、同社はワイヤレスおよびブロードキャストIP事業「Ensigma」の売却を検討していたが、Black氏はこれに反対したという。
Black氏は、「AR(拡張現実)システムやVR(仮想現実)システムの多くは、コネクティビティなしでは機能しない。コネクティビティは多くのシステム、特にIoT(モノのインターネット)分野で重要となる。当社は、GPUとニューラルネットワークアクセラレータ、コネクティビティ技術を駆使して、AIシステム全体をサポートすることを目指している」と述べている。
Ensigmaは、1986年に設立されたデジタル音声処理を手掛ける企業で、BBCや通信事業者大手のBT(British Telecommunications)、日立製作所、Texas Instruments(TI)などを顧客に抱えていたが、2001年にImaginationに約750万米ドルで買収された。同社は、ARC International(2010年にSynopsysが買収)と提携して、ARCプロセッサベースのMP3ソリューションの開発にも取り組んでいる。
Imaginationの傘下で、Ensigmaは、Wi-Fi、Bluetooth、BLE、IEEE 802.15.4といった無線通信技術の他、低消費電力のGPS対応GNSS IP、GLONASS、Beidou、Galileo GNSS、WAASやEGNOSといった静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS)向けの接続性ソリューションを提供するようになった。
Imaginationは自社のGNSS IPを生かし、ローカル通信ネットワークではなく衛星に直接つながるIoTネットワーク下の接続機器に特に注力するという。それにより、位置決めやナビゲーション、タイミングサービスが求められる電池式のリモートIoTセンサー、エッジデバイス、ウェアラブル機器、ヘルスモニターなどの用途が実現できるようになる。
Black氏の戦略のより重要な部分として、さらなるエコシステムを提供することが挙げられる。同氏は「当社は、さらに多くのIPブロックとソフトウェアのエコシステムを提供することに注力する。また、(買収を通じて)有機的、無機的に成長することも検討している。折り畳み式携帯電話などの製品が開発されようとしていることから、携帯電話の性能はさらに向上することが大きく見込まれる」と述べた。
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