Intelは、10nmのM0とM1にCo配線を使うことにした。Coは、Cuより抵抗値が高いが、Cuのような巨大なグレインを形成しない。断面電子顕微鏡写真でCuとCoの配線を比較すると、その差は一目瞭然である(図5)。従って、配線材料にCoを使えば、電子衝突による抵抗値の増大を避けることができる。
では、もう一方のバリアメタルの対策はどうしているのだろう? Intelは、IEDM2017の発表では、バリアメタルを明らかにしなかった。ところが最近、サンプル出荷されたチップ解析の結果から、Coを含有したRuを使っていることが漏れ聞こえてきた。
そして、Intelが10nmプロセスを立ち上げられない原因には、信頼できる関係筋からの情報として、Co配線のCMP(化学機械研磨)における欠陥の問題および、Coを含有したRuバリアメタルのCMPがうまくいかない問題があると聞いている。
では、TSMCやSamsungは、このような問題を、どう解決しているのだろうか。
IBMは、Samsung、GLOBALFOUNDRIES(GF)と、技術提携している。そのIBMの野上毅氏らは、非常に巧妙なバリアメタルのプロセスを開発した。その名は、“Through-Co Self Forming Barrier Process (tCoSFB)”という。恐らく、tCoSFBは、Samsungが7nmの量産に使うことになるだろう。
また、GFについては、2018年8月に、「7nm FinFETプロセスの開発を無期限に延期する」「GFのこの決断を受けて、同社の顧客であるAMDは、7nmチップの製造をTSMCで行うという決定を下した」ということが報じられた(関連記事:「GLOBALFOUNDRIES、7nm開発を無期限停止へ」(2018年8月29日))。この結果、もしかしたら、TSMCもIBMのtCoSFBを使うことになるかもしれない。
Intelには無く、Samsungに(もしかしたらTSMCにも)ある技術は、IBMが開発したtCoSFBである。また、IBMには、Intelが苦しんでいるCoのCMP技術もあると推測される。では、tCoSFBとはどんなプロセスなのか?
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