NECと東京大学の研究グループは共同で、「高速カメラ物体認識技術」を開発した。撮影した大量の画像データから、不具合のある製品などを高速かつ高精度に判別することができる。
NECは2019年3月、東京大学大学院情報理工学系研究科石川正俊教授室の妹尾拓講師らの研究グループと共同で、「高速カメラ物体認識技術」を開発したと発表した。撮影した毎秒1000フレームの画像から高精度に合否を判定することができ、製造ラインにおける検品作業を効率化できるという。
NECらの研究グループは、高速カメラの追跡処理で得られる「物体の移動量」などと、「画像の鮮明さ」など認識に有効な画像との間に高い相関があることに着目した。これに基づき、大量の画像データの中から物体認識に適した画像であるかどうかをAI(人工知能)が瞬時に判断し、選別できる技術を開発した。
今回開発した技術は大きく2つある。1つは、高速カメラで撮影した毎秒1000フレームの対象物体画像の中から、傷や刻印などが認識できる画像のみを選別する技術である。これにより、処理を行う画像点数やその解析時間を数十分の1に削減できるという。
もう1つは、同一物体を撮影した複数の画像から対象物体を解析し、リアルタイムに認識する技術である。研究グループは、得られたそれぞれの画像に対し、小規模なニューラルネットワークを利用して、軽量化した認識を繰り返し行う。その結果を突き合わせて最も多い結果を正解とする多数決方式を採用した。この結果、認識処理を0.01秒程度で実行するなど、従来に比べ約40%も短縮できるという。実験では物体がカメラの前を0.03秒で通過しても、約5mmの大きさで物体に刻印された文字の違いを、95%以上の高い精度で判別できることを確認した。
開発した技術は、製造ライン上を高速に移動するビンや缶のラベル検査、錠剤や食品の異物検知などに適用できるとみている。
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