形やサイズがカスタマイズ可能である点も、Stereax M50が医療インプラント機器向けとして適していることを示す大きな特長だ。半導体の製造と同様のプロセスを用いていることから、ミリメートル単位までの小型化や、用途に応じたさまざまなサイズと形状で製造ができる。この技術によって、血液への注入や末梢神経系に埋め込むことなどが求められるインプラント医療機器への接続も可能となったという。Hayden氏は、さらに、Stereax M50の厚さについても、「ほとんどは基板の厚さであり、半導体製造と同様のアプローチを行えば薄化が可能だ」と説明し、「次にターゲットとしているのは、厚さ200〜250μm。1つの電池を薄くしたうえで多層化(積層)することで、容量の増加を目指せる」と語った。
イリカは、Stereax M50の製造技術をIP(Intellectual Property)として機器メーカー(OEM)などに提供する予定だ。用途としては、てんかんやパーキンソン患者向けの神経刺激装置や、健康維持のために肺動脈付近に埋め込む血圧センサーといった医療用インプラント機器のほか、スマートコンタクトレンズやスマート歯列矯正具などのウェアラブル機器も見込んでいるという。現在、主要なマーケットとなる日本、欧州、米国を中心に、パートナー企業を探している。Hayden氏は、「さまざまな分野の企業とパートナーとなって、量産につなげていきたい」としている。
イリカは、医療用インプラント機器向け以外にも、全固体電池の開発を進めている。インダストリアルIoT(IIoT)向けでは、−40〜+150℃と動作温度の範囲を拡大、スマートホームやスマートシティー向けではソーラーセルとの集積化、電気自動車(EV)向けではより大容量の全固体電池の開発などを行っているという。Hayden氏は、IIoTでは、現在、風力発電用装置を手掛ける中国のTitan Wind Energyや、環境発電技術を手掛ける企業で、シャープからスピンアウトした英国Lightricityとパートナーシップを締結していることを明かした。
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