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人手不足、過疎化に悩む地方と親和性が高い? IoTのビジネスモデル考察大山聡の業界スコープ(17)(1/2 ページ)

今回は、IoTを活用したサービスを提供する側のビジネスモデルを考える。どんなデータや情報が価値を生むのか、どうすればビジネスとして成立するのか、といったことを具体的にイメージしていく。

» 2019年05月22日 11時33分 公開
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 前回、「日本の“IoT維新”に期待」ということを書かせていただいた。そして、「地方自治体による5G(第5世代移動通信)の活用方法がカギを握る」ということを強調させてもらったが、今回はこの件についてもう少し踏み込んだ議論をしてみたいと思う。IoTを活用したサービスを提供する側のビジネスモデルを考える上で、どんなデータや情報が価値を生むのか、どうすればビジネスとして成立するのか、といったイメージを具体化させることが、普及の推進には必要と思われるからである。

 すでに広く普及しつつあるクラウドコンピューティングは、GAFA*)に代表されるクラウドサービスプロバイダに対して、われわれユーザーがPCやスマホからアクセスする形でサービスを受けるのが一般的である。サービスの内容としては有料のものもあるが、サービスプロバイダが広告を掲載する企業から広告料を徴収することで、多くのサービスを無料で提供するビジネスモデルが成立している。不特定多数の一般ユーザーからのアクセス件数を増やすために、この広告料徴収が極めて有効な手段として定着しているのが現状だろう。

*)GAFA:Google、Amazon、Facebook、Appleの4社を指す呼称。

 では、IoTではどのようなビジネスモデルが有効なのだろうか。前回に紹介した事例を見ながら検証していく。

スマート農業:伸びしろは大きい

 まずは「スマート農業」についてである。

 スマート農業は農業従事者が自身の作業を効率化したり負担軽減したりすることが目的で、サービスを提供する相手を特定できる。そのため、有料化しやすい事例の一つだろう。ただし、どのような機能も導入にはそれなりのコストがかかることが想定され、初期コスト負担の大きさによっては導入のハードルが高くなってしまう可能性がある。元々エレクトロニクスに対しては親和性が高くない、導入の費用対効果が分かりにくい、という意見が多数を占めそうな状況である。そう考えると、いきなり多額の導入費用を払って1年後の効果に期待しよう、という考え方はユーザーになじまない恐れがある。しかし、見方を変えれば、エレクトロニクスとの親和性が低いということは、導入が成功したときの伸びしろが大きい、というプラス要因にもなり得る。サービスプロバイダとしては、営業トークで効果を約束するだけでなく、導入による効果が確認できた時点で一定の割合の料金を徴収するなど、利用者のリスクを考慮したサービス形態での提供が不可欠であろう。

画像はイメージです。

 システムを導入することによって、サービスプロバイダはさまざまなデータやノウハウを蓄積させることが可能になる。取得できるデータは農地、農作物、作業者などに関するデータ、あるいはそれらの組み合わせに関するデータなど、多くの場合、設置したセンサーから取得できるデータが中心になるだろう。これらのデータをどこまで分析できるか、AIを駆使して何らかの推論を導き出せるか、ということが今後のサービス内容を進化発展させる上で重要になる。農業従事者の経験や勘を定量化してシステムに反映させる、といったことも求められよう。いずれにしても、ユーザーとの対話をどこまでシステムに反映させることができるか、それによって特定顧客のメリットをどこまで極大化できるか、がポイントである。不特定顧客からのアクセス件数を重要視するクラウド型とは対照的なシステムが求められている、と見ることができよう。

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