3GPPがリリース15以降に定義した次世代の携帯電話技術である「5G New Radio」は、既に開発が進行中だ。Samsung ElectronicsとVerizon、LG ElectronicsとSprint、そしてHuaweiの各社が5Gスマートフォンを発売するなど、一部の地域のエンドユーザーは、4G LTE上に構築された非スタンドアロン型アーキテクチャにアクセスできるようになり、またAppleも2020年にこれに続くものと見られている。その後、スタンドアロン型5Gの導入が進むことになるだろう。
2019年4月、5Gの商用サービスが米国と韓国で始まった。AT&Tは、2018年にロールアウトを開始しており、2019年半ばには全米規模のサービスエリアを達成することを目標にしている。英国では、Vodafoneが2020年に5Gのロールアウトを開始する計画を発表している。ただし、高精度測位サービスは、2019年末ごろとされるリリース16が発表されるまで、3GPP 5G NRの仕様には組み込まれず、導入時期は早くても2020年になるだろう。
5Gは多様な原動力に支えられている。新たな適用分野では、セルラーネットワークのパフォーマンスの信頼性、可用性、サービスエリア、遅延の観点から、ますます高い要求が提示されるようなっている。モバイルネットワーク事業者は、5Gを業界での新たな収益源を見いだすための手段と見ている。チップセットベンダーは、5Gを知的財産権のライセンス供与によって収益を拡大する好機と見ている。そして、ユーザーは待ち望んでいた、より高いデータ速度を得ることになるだろう。
5Gセルラー通信技術は、eMBB、uRLLCおよび、mMTCという3つの主な利用形態を通じて、これらの多様な要件に対応する。以下、それぞれのシナリオについて簡単に説明したい。
これらのシナリオで測位を可能にするには、より高い周波数とより広い帯域幅、より複雑なアンテナアレイに組み込まれた多くのアンテナ、より密な電気通信ネットワークなど、利用可能な技術の幅を広げるために利用できる新しい信号とインフラストラクチャが必要になる。目標は野心的で、15ミリ秒以下の低遅延でサブメートル級の測位精度を実現しようとしている。
3GPPは現在、一連の4G LTE測位手法を5Gに取り込むことに注力している。通常、これらの手法はアップリンク信号とダウンリンク信号を使用して個々のエンドデバイスの位置を特定するが、これらのエンドデバイスの位置は、アンカーポイントとして機能するモバイルネットワークアンテナとの相対位置として特定される。これらの手法の一例として、拡張セルIDやTDOA(Time Difference of Arrival)ベースの手法が挙げられる。
拡張セルIDでは、エンドデバイスは複数の基地局までの距離を監視し、信号強度とデバイスへの概算伝搬時間を測定する。これらの観測結果を組み合わせることで、単に最も近い中心セルを単独で測定する方法よりも、デバイス位置のより正確な推定値を算出できる。
TDOAベースの手法では、エンドデバイスは複数の基地局からの信号の到着時間を正確に測定する。観測受信時刻間の時間差に基づくマルチラテレーション手法を用いると、デバイスは、拡張セルIDを使用するよりも正確に観測基地局からの位置を判定することが可能になる。
もう1つのクラスは、いまだにうまく利用されていないサイドリンクである。これは、各デバイスが相手側デバイスとの相対的な位置を算出できるようにする4G LTEの技術だ。分かりやすいユースケースとしては、車車間(Vehicle to Vehicle)通信が挙げられる。
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