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5Gを活用する測位、低遅延でサブメートル級の精度も各方面での活用に期待(1/5 ページ)

5G(第5世代移動通信)を活用した測位が注目されている。3GPPリリース16では、高精度の位置情報サービスを安価に、どこにでも、高い信頼性で提供することを約束されている。新しい信号特性をさまざまな非セルラー技術と組み合わせて活用することによって、堅ろうで信頼性が高く、多彩な形式のハイブリッド測位が可能になる。

» 2019年06月10日 11時30分 公開

 「自分はGPSを信頼しているのだろうか。無条件にそれに従う心構えができているのだろうか――?」日常生活で、皆さんが自分自身にこのように問いかけることは、まずないだろう。だが、私たちがスマートフォンや自動車の中で使われている全地球航法衛星システム(GNSS)レシーバーから読み込んでいる位置情報は、統計値なのである。

 つまり、指示された位置から、一定の確率(例:50%)で、定義された距離(1mなど)の範囲内に自分がいることを示しているのだ。結局のところ、提供される情報に依存する度合いは、使用している機器が提供する出力を自分がどの程度信頼しているかにかかっているといえるだろう。

画像はイメージです

 GNSSは長年にわたり、ユーザーデバイスの正確な位置を推定するための、ほぼ唯一の情報源だった。しかし、測位の用途がより広範囲で多岐にわたるようになり、安全性が不可欠になるにつれて、読み取り値の信頼性を定量化する方法を理解すること、そしてGNSSが利用不能になったときに頼ることができる代替入力源を確保することが、そうした利用を成功させる上で欠かせなくなっている。

 GNSSはもちろん位置情報の提供源として唯一の存在ではない。セルラーモデムを搭載したデバイスは、セルラー信号を使用しておよその位置を特定できる。

 u-blox(ユーブロックス)をはじめとする市場の主要企業は長きにわたって、自社のセルラー通信モジュールでセルラー信号ベースのソリューションやハイブリッド位置情報ソリューション(GNSSとセルラー信号を組み合わせたもの)を提供することで、位置情報サービスのサービスエリアを拡大してきた。

 現在、5G(第5世代移動通信)の技術構成の中で見落とされがちな要素である“5Gによる測位”は、業界主導の3GPP(Third-Generation Partnership Project)によって開発および標準化が進められている。3GPPは、電気通信標準の開発を遂行している7つの団体と多数の企業メンバーで構成されており、業界標準の多様性のニーズを念頭に置きながら、次世代セルラー通信技術の要素として5G測位の開発を推進している。

位置情報技術が発展してきた経緯

 測位技術は、その登場以来、セルラー通信を可能にする上で重要な役割を果たしてきた。この技術は、実は単なる副産物として生まれたものだった。電話の着信呼を受信者の端末装置に送り届けるために、モバイルネットワーク事業者は、常にエンドユーザーがどのセルラー基地局に接続しているかを知る必要があったのだ。

 この状況が変わったのは1999年のことだ。この年、米国の規制当局が緊急サービスを可能にするために高精度の測位技術を必須条件にしたのである。これにより、セルラー技術に基づく第1世代の専用位置情報サービスが開始されたのだ(参考)。EUも、2002年に米国に倣って同様の法律を定めている(参考)。以来、位置情報サービスの範囲はセルラー技術の進歩とともに、主に業界の需要によって拡大を続け、3GPPによって標準規格が整備された。

 この結果、今日の4G LTEネットワークでは、モバイルネットワーク事業者がさまざまな精度で各ユーザーの位置を特定するための多様な手法をとれるようになっている。これらの手法では、固定/モバイルの両ネットワークインフラはもちろん、測位衛星などの外部ソースがさまざまに組み合わされ、利用されている。

 下表は、主な4G LTE位置情報サービスの概要を示している。

拡張セルID
(E-CID)
E-CIDは、信号レベルと移動時間推定値を用いて基地局IDに基づく位置推定値を補強する
アシストGNSS
(A-GNSS)
A-GNSSは、測位をスピードアップしたり容易化するために暦データや天体暦データなどの情報をユーザー・デバイスに提供する
観測到達時間差
(OTDOA)
OTDOAでは、双曲線マルチラテレーション法を使用して、少なくとも3つ、理想的にはそれ以上の基地局からの信号に基づいて位置を推定する
ハイブリッド
A-GNSS + OTDOA
A-GNSSとOTDOAを組み合わせると、GNSSの到達範囲がGNSS信号が利用できない場所にまで広がる
アップリンク到達時間差
(UTDOA)
UTDOAは、双曲線マルチラテレーション法を使用して、近傍の基地局に送信された信号に基づいて位置を推定する
表1 主な4G LTE位置情報サービス。「セルラー・ネットワークにおける測位技術の進化、2Gから4Gへ」(Rafael Saraiva Campos、Hindawi、2017)に基づく
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