今回は「強誘電体メモリ(FeRAM)」を取り上げる。FeRAMの記憶原理と、60年以上に及ぶ開発の歴史を紹介しよう。
2018年8月に米国シリコンバレーで開催された、フラッシュメモリとその応用製品に関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」でMKW Venture Consulting, LLCでアナリストを務めるMark Webb氏が、「Annual Update on Emerging Memories」のタイトルで講演した半導体メモリ技術に関する分析を、シリーズでご紹介している。
なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
本シリーズの前回から、次世代メモリの有力候補入りを目指す、2つの次世代不揮発性メモリ技術をご紹介している。1つは「カーボンナノチューブメモリ(NRAM:Nanotube RAM)」、もう1つは「強誘電体メモリ(FeRAM:Ferroelectric RAM)」である。前回はカーボンナノチューブメモリ(NRAM)技術をご説明した。今回はもう1つのメモリ技術である、強誘電体メモリ(FeRAM)をご紹介する。
強誘電体とは、外部から電界を加えると分極が生じ、なおかつ外部の電界をゼロにしても分極が残る絶縁体を指す。強誘電体の薄膜を金属の電極で挟んだ3層構造(「強誘電体キャパシター」と呼ぶ)を作ると、それだけで不揮発性の記憶素子となる。分極の向きが、論理値の「高」あるいは「低」に対応する。
最も一般的なメモリセルは、MOSFETをセル選択トランジスタ(Tと略記)、強誘電体キャパシターを記憶素子(Cと略記)とする。1個のセル選択トランジスタと1個の記憶素子で構成されたセル(1T1Cセル)が、この方式では最も密度が高い。
セル選択トランジスタと記憶素子を1個のトランジスタで実現した高密度なメモリセル(1Tセル)もある。MOSFETのゲート絶縁膜の一部に強誘電体の薄膜を使ったトランジスタで、「強誘電体トランジスタ(FeFET)」と呼ばれる。FeFETによる1Tセルを実現できることが、強誘電体メモリ技術の大きな特徴となっている。
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