米調査会社のGartner(ガートナー)は2019年7月22日(米国時間)、2019年の世界の半導体市場の売上高は4290億米ドルとなり、2018年の4750億米ドルから9.6%減少するとの予測を発表した。同社の前回予測3.4%減からさらに下方修正した形であり、同社のシニアプリンシパルリサーチアナリスト、Ben Lee氏は、「米中貿易戦争やスマートフォンやサーバ、PCなどの主要アプリケーションの低迷によるメモリなどの価格下落は、世界の半導体市場を2009年以来の低成長へ向かわせている」としている。
米調査会社のGartner(ガートナー)は2019年7月22日(米国時間)、2019年の世界の半導体市場の売上高は4290億米ドルとなり、2018年の4750億米ドルから9.6%減少するとの予測を発表した。同社の前回予測3.4%減からさらに下方修正した形であり、同社のシニアプリンシパルリサーチアナリスト、Ben Lee氏は、「米中貿易戦争やスマートフォンやサーバ、PCなどの主要アプリケーションの低迷によるメモリなどの価格下落は、世界の半導体市場を2009年以来の低成長へ向かわせている」としている。
同社は、世界の半導体市場予測を四半期ごとに実施している。前回(第1四半期)の予測は2019年3月までの情報をもとに実施しており、米中貿易戦争の影響はある程度含まれていたものの、「貿易戦争が緩和に向かうという予測でシナリオを作成していた」という。今回(第2四半期)は、2019年6月までの情報をもとにした予測であり、5月からのHuaweiへの全面禁輸措置などを踏まえたことが、下方修正となった要因の1つだという。
同社は、「米国の中国に対する貿易規制は、半導体の需要と供給に長期的な影響を与える。これらの問題は、中国国内での半導体生産を加速させるだけでなく、Armベースのプロセッサなどを開発する中国の地元メーカーを台頭させることになるだろう」と指摘。さらに、「一部の製造工場は、この紛争中に中国国外に移転し、多くの企業はさらなる混乱を抑えるため製造拠点を多様化させるだろう」とまとめている。
また、今回の予測では、G20サミット後の米中首脳会談の結果やSugon(曙光)などの中国のスーパーコンピュータ企業に対する輸出規制などは含まれておらず、同社の半導体/エレクトロニクス主席アナリスト、山地正恒氏は、「前提条件をどう設定するかによって、かなり変わってくる。今後の展開を考えると、さらに不安要因はある」と述べている。
ただし、山地氏は、こうした要因を踏まえたうえでも、「次回(第3四半期)の予測に大きな変更を加えるかといえば、恐らくそれはない」と付け加える。同社は、「米中の貿易戦争については、比較的早い段階で妥協点を見いだし、解決に向かう」と、見通しを立てているのだ。そうした点などから、2020年からは再び市場が好転する予測となっており、2018〜2023年の年平均成長率も前回の3.7%から−0.1ポイントの3.6%と、若干の減少に収まっている。
今回は、日韓の半導体材料の輸出に関する問題についても、予測に含まれていない。この問題を巡っては、NAND型フラッシュメモリ(以下、NAND)やDRAMの生産への影響などの懸念がされているが、山地氏は、「メモリ市場は過剰在庫の状態で、マーケット需要は非常に弱い。現在の3品目の輸出条件変更が、予測内容を大きく変化させる要因になるとは見ていない」と説明する。
同社が四半期ごとにまとめる世界の半導体製品在庫レベル調査によると、2018年第1四半期以降、同社が過剰在庫とする数値を超えたままの状態であり、また、2019年第1四半期から同年第2四半期は、「リーマンショック時よりも過剰在庫で、ITバブル崩壊時に匹敵する状態だ」という。そして、この過剰在庫の要因は大半がメモリのため、今回の輸出に関する問題は、積み上がった在庫を消化する形になりうる、ということだ。
同社は、ハイパースケールベンダーの需要の鈍化や、DRAMの在庫水準の上昇によって、2019年にDRAMの価格が前年比42.1%下落すると予測し、「過剰供給の状態は、2020年の第2四半期まで続くだろう」としている。また、NANDについても、2018年第1四半期から供給過剰状態であり、軟調な需要も続くとしている。
半導体市場の動きは、特にDRAMおよびNANDの動向が大きく影響しているという。山地氏は、「メモリ市場を除くいた場合、市場の予測は、右肩上がりに成長しているケースが多い」と説明。実際に、今回の予測でも、2019年のメモリ市場は前年比で大きく減少するのに対し、非メモリ市場はほぼ横ばいの状態だという。
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