京都大学化学研究所の研究グループは、ハロゲン化金属ペロブスカイトが負の屈折率温度係数を示すことを発見した。この材料を用いて、正の依存性を持つ半導体「ZnSe」の光学温度補償が行えることを実証した。
京都大学化学研究所の金光義彦教授と半田岳人同博士課程学生、田原弘量同助教、阿波連知子同研究員らの研究グループは2019年7月、ハロゲン化金属ペロブスカイトの1つである「CH3NH3PbCl3」が負の屈折率温度係数を示すことを発見したと発表した。この材料を用いて、正の依存性を持つ半導体「ZnSe」の光学温度補償が行えることを実証した。
ハロゲン化金属ペロブスカイトは、材料コストが安価で、溶液法により高品質の結晶が得られることから、柔軟性のある光デバイスの材料として注目されている。既に高い効率の太陽電池や発光ダイオードが開発されている。ところが、ペロブスカイト材料における屈折率の温度依存性はこれまで明らかにされてこなかったという。
そこで研究グループは今回、CH3NH3PbCl3の単結晶を作製し、屈折率の温度依存性を測定した。この結果、温度が上昇するにつれ屈折率が大きく減少する(負の屈折率温度係数を示す)ことが分かった。シリコンなど一般的な半導体材料は、「正の屈折率温度計数」を示すという。
研究グループは、こうした逆の特性を活用した。具体的には、温度の上昇によって生じるZnSeの光路長変化を、CH3NH3PbCl3を用いることで、完全に打ち消すことに成功した。
CH3NH3PbCl3は、可視光から近赤外光まで透過し、溶液法で高品質な試料を簡単に作製することが可能である。このため、光デバイスにおける温度補償などへの応用が期待される。
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