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インク使わず、北斎の浮世絵をフルカラーで印刷神奈川沖浪裏を1mmのサイズで作製

京都大学のシバニア・イーサン教授と伊藤真陽特定助教らの研究グループは、インクを全く使わずに、葛飾北斎が描いた絵画「神奈川沖浪裏」を、フルカラーで作製した。その大きさはわずか1mmサイズである。

» 2019年06月26日 13時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

フィブリル層の周期調整で、全ての可視光を発色

 京都大学高等研究院物質‐細胞統合システム拠点(iCeMS:アイセムス)のシバニア・イーサン教授と伊藤真陽特定助教らの研究グループは2019年6月、インクを全く使わずに、葛飾北斎が描いた絵画「神奈川沖浪裏」を、フルカラーで作製したと発表した。その大きさはわずか1mmサイズである。

 ポリマー(高分子)を、分子レベルで引き伸ばしていくと、「フィブリル」という細い繊維を結成する作用(クレージングと呼ばれる)が生じる。このフィブリルを視覚的に認識できるレベルでクレージングが起こると視覚効果が得られるという。

 研究グループは、組織化したミクロフィブリレーション(OM:Organized Microfibrillation)と呼ばれるクレージングを調整することで、フィブリルを組織的に形成させ、これによって特定の色を反射する素材を開発した。特に今回、構造色を示すミクロな構造を形成するために、圧力を1μm以下のスケールで調整できることを確認した。

イメージ画像 出典:京都大学

 開発した素材は、フィブリル層の周期を調整すると、青から赤まで全ての可視光を発色させることができる。この発色は、自然界で見ることができるチョウや鳥の羽の鮮やかな色と、全く同じ原理で生み出されているという。

 OM技術はインクを使わず、透明でフレキシブルな素材上に14000ドット/インチまでの画像解像度で大規模なカラー印刷を可能にする。この応用例として、紙幣の偽造防止や肌に装着可能なフレキシブル人工環境器系流路チップ、コンタクトレンズなどを挙げた。

 京都大学シバニア研究室は、ポリカーボネートなど一般的に活用されているポリマーで、OM技術を活用することが可能であることを実証している。食品や医薬品を包装するプラスチックにも応用できるという。また、OM法は構造色以外のマテリアルの性能制御にも役立つ可能性があるとみている。

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