FASTは、目標通り室温から200℃までの低温熱源を利用した発電を実現。発電性能は現在、5℃の温度差で85μW/cm2であり、高際氏は「プロジェクトの残り時間(2020年5月末まで)に、目標を達成したい。また、高性能化を進めれば、さらに低温度差で、十分な発電も可能になっていくだろう」としている。
また、大気中で昇温しても650℃まで安定と、ビスマス・テルル材やケイ化マグネシウムなどより耐酸化性に優れるほか、モジュールの耐久性確保に必要な機械特性についても、「宇宙利用もされるシリコンゲルマニウムと同程度だ」という。
今回開発に成功した熱電発電モジュールは、アイシン精機の登別事業所(北海道登別市)の量産ラインで製造。1cm角のセラミックス基板に、FASTのチップ14個を搭載している。製造にあたり、ダイシング時にはメッキの剥離やチップの破損もないなど、アイシン精機の小島宏康氏は、「非常に加工性に優れているといえる」と強調していた。
研究グループは、実際にこの熱電発電モジュール4つと温度、湿度センサー、BLE通信モジュールを搭載した試作機を使ったデモンストレーションで、その性能を紹介した。
デモでは、お湯の入ったカップを試作機の上に置いたり、人の手で触れたりといった低温度差で内蔵した熱電発電モジュールが発電。センサーが取得した温度や湿度の情報をBLEで送信し、タブレット端末上にリアルタイムで表示させる様子が確認できた。
高際氏は、今後さらなる材料の高性能化を進めるとしつつ、「実用にあたっては、機器によって消費電力も変わってくる。それぞれの機器を駆動できるだけの出力さえ確保できればいいので、モジュールの設計によって対応することもできるだろう」と話していた。実用化については未定であり、今後ニーズを探っていく予定だ。
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