今回は、既存のスマートフォンに取り付けることで第5世代移動通信(5G)対応を実現するアンテナユニット「5G moto mod」に搭載されるチップを詳しく見ていく。分析を進めると、Qualcomm製チップが多く搭載され、大手半導体メーカーの“領土拡大”が一層進んでいることが判明した――。
2019年、多くの会社から第5世代移動通信(5G)対応のスマートフォンが発売されている。もっとも早い時期にリリースされたものはSamsung Electronicsの「Galaxy S10 5G」だ。2機種目がMotorolaの「moto z3」に装着し5G対応を実現する5Gアンテナユニット「5G moto mod」。今回はこの2機種目の5G moto modについて詳しく見ていくものとしたい。ちなみに3機種目は2019年8月に中国で発売されたHuaweiの5Gスマートフォン「Mate20 5G」だ。こちらも筆者が代表を務めるテカナリエでは、既に2台を購入し現在分解解析からチップ開封まで行っているところである。
図1は5G moto modの外観および分解の一部様子、5Gアンテナユニットの拡大の様子である。
5G moto modは既に発売されているスマートフォンmoto z3に付加して5G端末として使えるユニットである。単体のスマートフォンというわけではないが、内部は5Gスマートフォン(今後発売されるもの)と同じ構成となっている。アンテナユニットは全部で4個、左右と上部の2カ所に装着されている。
厚さ数ミリの5G moto modはスマートフォン(moto z3)に装着すると全体の厚みは増えてしまうが、5Gスマートフォンとして、米Verizonネットワークで既に使用が開始されている。
図2は、アンテナユニットを分解し薬品を使ってチップを開封し、顕微鏡でチップ上のロゴを確認したものである。
アンテナユニット自体は2018年にQualcommから公式に発表された「QTM052」だ。また各アンテナには2つのチップが搭載されており、フリップチップ実装(チップを面で基板に直接接続する)のため、アンテナの状態で見えているのはチップの裏面(回路のない面)である。そのため、チップの型名などが刻印されているわけではなかった。弊社ではチップを基板から取り外し、回路面の観察を行い、図2のように2つのチップともにQualcomm製であることを確認した。アンテナアレーや電源制御などのチップであることが判明した。ともにRF(高周波)やアナログ回路に(コスト面、性能面で)最適な若干、古いプロセスで製造されるチップであった。各アンテナ4個ともに同じチップの組み合わせなので、Qualcommのチップがここだけで合計8個使われているわけだ。
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