Armは、2019年10月8〜10日に米カリフォルニア州サンノゼで技術者向けイベント「Arm TechCon 2019」を開催した。そこでのビッグニュースの一つは、カスタム命令を「Cortex-M」コアに実装できるようにする「Arm Custom Instructions」である。
Armは、2019年10月8〜10日に米カリフォルニア州サンノゼで技術者向けイベント「Arm TechCon 2019」を開催した。そこでのビッグニュースの一つは、カスタム命令を「Cortex-M」コアに実装できるようにする「Arm Custom Instructions」である。
ArmのCEO(最高経営責任者)を務めるSimon Segars氏は、Arm TechCon初日の基調講演でこの方針転換を発表した。Armは数十年にわたって同社の命令セットアーキテクチャ(ISA)を厳密に管理してきたが、ついにライセンシー(ライセンスのユーザー)が独自のカスタム命令を作ることを許可すると決定した。これは、ある分野に特化したワークロードの高速化を支援するものである。
Armはこれまで、カスタム命令をサポートする動きに反発し、一貫したプログラミングモデルを維持してきた。一方、他のIP(Intellectual Property)企業の多くは、カスタマイズ可能な命令セットで好調なビジネスを展開している。こうした企業には、Tensilica(現在はCadenceの一事業部)とARC(現在はSynopsysの一事業部)などがある。由緒あるMIPS命令セットも、ユーザー定義の命令もサポートしていた。
そして今、オープンソースのRISC-V ISAの台頭とそのユーザーコンフィギュアビリティ(ユーザーによる設定が可能であること)を受け、Armはついにその信念を曲げ、カスタム命令向け命令セットを公開するに至った。カスタマイズ可能なこの新機能とライセンスプログラム「Arm Flexible Access」は、顧客がRISC-Vに誘引される2つの主要課題への対応策となる。
Armが今回公開したカスタマイズ可能な命令セットは、Cortex-Mコアで利用できる。今回公開される命令セットは主に、大型SoC(System on Chip)に搭載されるマイコンおよびコントローラーコア向けに設計されている。
カスタム命令セットを最初にサポートするのは「Cortex-M33」だ。将来的には他のCortex-Mコアでも、同レベルのカスタマイズをサポートする計画だという。
Armは、Cortex-M33向けの新しいカスタム命令機能に別料金を上乗せしていない。ArmのフェローであるPeter Greenhalgh氏はArm TechConの後半で、「リアルタイム処理向けの『Cortex-R』コアにも、カスタム命令サポートを提供する計画だ。最終的にはアプリケーションプロセッサで使用される『Cortex-A』コアにも、同機能を提供する可能性もある」と述べている。
Cortex-Rにカスタム命令を追加すると、専門分野に特化した命令を使用して特殊な計算やデータ移動を高速化することができ、リアルタイム制御アプリケーションに非常に役立つ。ただし、スマートフォンやサーバなどの主流アプリケーションに展開されているCortex-Aコアにカスタム命令サポートを追加するタイミングと方法ははるかに複雑であるため、ArmはCortex-Aのサポートについては公約していない。
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