セイコーエプソンは2019年10月16日、小型の電子ペーパーディスプレイ(EPD)を駆動するドライバーを搭載した16ビットマイコン「S1C17F63」を開発したと発表した。サンプル出荷は既に開始していて、サンプル価格は、パッケージタイプがQFP15-100のもので650円(税別)。量産は2019年内に開始する予定だ。
セイコーエプソン(以下、エプソン)は2019年10月16日、小型の電子ペーパーディスプレイ(EPD)駆動向けのドライバーを搭載した16ビットマイコン「S1C17F63」を開発したと発表した。サンプル出荷は既に開始していて、サンプル価格は、パッケージタイプがQFP15-100のもので650円(税別)。量産は2019年内に開始する予定だ。主な用途は、ディスプレイカード(小さなディスプレイが付いたカード)や、EPDを採用した機器など。
ディスプレイカードは、クレジットカードのワンタイムパスワードやセキュリティコードを表示するといった用途で使われる。今から3〜4年前に本格的に市場が立ち上がり、少しずつ成長していく中でディスプレイカードの開発課題も幾つか見えてきた。電池寿命、耐久性、セキュリティの向上だ。
S1C17F63は、これらの課題を解決するために開発された。エプソンには、同様にEPDドライバーを内蔵する16ビットマイコンの既存品「S1C17F57」があるが、これは約10年前に発売されたもの。新製品のS1C17F63では、内蔵メモリの容量増加や低消費電力化といった点で改良を図った。
S1C17F63のRTC(リアルタイムクロック)動作モードの消費電流は120nA(標準値)で、S1C17F57の210nAに比べて約40%低減することに成功した。これにより、電池容量を増加することなく、現行の約3年から4〜5年にのばすことが可能になるとする。
さらに、EPD駆動ドライバーの他、駆動に必用な電圧を生成する内部昇圧回路も搭載し、1チップ化した。そのため外付けドライバーが不要になり、部品点数とチップサイズの削減を実現できる。つまり、カード内部の“空きスペース”が大きくなるので、折れ曲がってしまった時の耐久性が上がることになる。チップの外形寸法は既存品の3.605×3.595mmから、2.883×2.923mmに縮小された。パッケージはQFP15-100の他、ベアチップでも入手が可能だ。
なお、EPDドライバーで駆動できるセグメント数は、既存品では64セグメントで、今回は42セグメントと減っている。エプソンは、「42セグメントなので6桁の数字を表示できる。ディスプレイカードに表示されるワンタイムパスワードは通常6桁、セキュリティコードは3〜4桁が多いので、42セグメントで十分だと考えた」と説明する。
さらに、内蔵している温度センサーで、温度による発振周波数偏差を補正。認証サーバとディスプレイカードの時間同期の精度を高めている。この時間同期がずれてしまうと、ワンタイムパスワードの更新もずれることになり、セキュリティが低下する。温度を補正し、時間カウントに反映することで、高精度に時間同期できることになる。ただし、水晶は外部に搭載されているので、ユーザー側が温度補正のキャリブレーションを行う必要がある。エプソンは、キャリブレーション用のサンプルソフトウェアを提供しているが、最終的なチューニングはユーザーが行うことになる。
エプソンによれば、ディスプレイカード市場は、フランスの大手銀行が導入し始めたことから、フランスを中心に欧州で成長が進んでいるという。同社は、前述した課題が解決すれば「市場はおのずと拡大していくだろう。日本でもキャッシュレスが浸透していけば、ニーズが強まるのではないか」と述べている。
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