物質・材料研究機構(NIMS)は、早稲田大学や多摩美術大学と共同で、にじみを表現できるソフトディスプレイを開発。電気で紅葉の状態変化を表現できる落ち葉型デバイスの試作に成功した。
物質・材料研究機構(NIMS)は2019年11月、早稲田大学や多摩美術大学と共同で、にじみを表現できるソフトディスプレイを開発したと発表した。電気で紅葉の状態変化を表現できる落ち葉型デバイスの試作にも成功した。電源を切っても着色状態は維持されるという。
無限解像度の落ち葉型ディスプレイは、紅葉前後の自然な色変化を再現することができる。このデバイスは、低抵抗の透明電極膜を付けた2枚のフレキシブルPETフィルムを用い、わずかな電流によって色が変化するエレクトロクロミック(EC)層(有機/金属ハイブリッドポリマー層)や電解質層、対極物質層を挟み込んだ構造となっている。
具体的な製造工程ではまず、レーザーを用いて2枚のフレキシブル透明電極基板を落ち葉型に加工するが、虫食いのある自然な形状にすることもできる。次に、片方のフレキシブル透明電極基板上にEC材料を重ね塗りする。これによって、にじみを表現できるようにした。もう片方のフレキシブル透明電極基板には対極物質を塗布し、粘性のある電解質層で2枚のフレキシブル透明電極基板を貼り合わせた。その後、電極配線加工や葉脈を作製して完成となる。
EC材料は、ルテニウムイオンを含む有機/金属ハイブリッドポリマーを用いた。このポリマーは、不揮発性で微小な電力によって発光色を変えることができる。例えば、ルテニウムイオンが2価の酸化状態ではオレンジに発色する。この膜に1V以上の電圧を印加すると、ルテニウムイオンが3価に酸化され、淡緑に色変化するという。つまり、ルテニウムイオンの酸化状態を電気化学的に切り替えれば、葉っぱの色を変化させることができる。紅葉した葉っぱを緑に戻すことも可能である。電気を切れば着色状態を維持することができるという。
研究グループは今回の研究成果について、自由曲面や3次元構造のディスプレイ、風力などで表示が変わるディスプレイ、透明になって消えるディスプレイなど、新たなディスプレイ開発につながる可能性が高いとみている。
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