東京大学らの研究グループは、導電性高分子(電気を流すプラスチック)材料に熱起電力が生じる機構を解明した。効率をさらに高めた熱電変換素子の開発が期待される。
東京大学大学院新領域創成科学研究科、同マテリアルイノベーション研究センター、産総研・東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ、物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)らの研究グループは2019年12月、導電性高分子(電気を流すプラスチック)材料に熱起電力が生じる機構を解明したと発表した。
研究グループは、オンチップサーモメーターデバイスを作製した。このデバイスには厚み数十ナノの高分子薄膜試料の他、抵抗加熱を用いたヒーターや校正済みの温度センサー、熱起電力を計測するためのプローブ電極を形成している。このデバイスは長さ100μmの領域で温度勾配を形成することが可能で、電気伝導度やキャリア数、ゼーベック係数も同時に計測した。
室温から約25Kの低温領域において、高結晶性の導電性高分子薄膜を用い熱物性計測を行った。この結果、ゼーベック係数は温度に対し線形に増大していく傾向であることが分かった。これは、金属や縮退半導体の振る舞いと一致する。これに加え、ホール効果やパウリ磁化率あるいは、ドルーデ反射率の観測など、金属や縮退半導体が示す電子物性を満たしていることも明らかとなった。
低結晶性の導電性高分子ではこれまで、こうした振る舞いが観測されておらず、金属のように縮退した電子状態が、熱起電力を生じさせる起源であることが判明した。X線構造解析や電子顕微鏡による観察でも、高い結晶性を確認することができた。
研究グループは、金属性を有する電子が低エネルギー領域の電磁波を反射すること(ドルーデ応答)を応用して、簡易的に材料をスクリーニングできることも実証した。
研究グループは、導電性高分子においてキャリアドーピングを用いて金属的な電子状態を制御すれば、効率をさらに高めた熱電変換素子の開発が可能とみている。
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