ジャパンディスプレイ(JDI)と東京大学は2020年1月21日、高速読み出しと高解像度撮像が可能な薄型イメージセンサーを共同開発した、と発表した。1枚のイメージセンサーで、高速読み出しが必要な脈波の分布計測と高解像度が必要な生体認証向けの指紋や静脈の撮像ができるといい、3年以内の製品化を目指している。
ジャパンディスプレイ(JDI)と東京大学は2020年1月21日、高速読み出しと高解像度撮像が可能な薄型イメージセンサーを共同開発した、と発表した。1枚のイメージセンサーで、高速読み出しが必要な脈波の分布計測と高解像度が必要な生体認証向けの指紋や静脈の撮像ができるといい、3年以内の製品化を目指している。
JDIは、「コア技術である低温ポリシリコン薄膜トランジスタ(LTPS TFT)をいかに応用していくかを探っていた」といい、2017年から東京大学大学院工学系研究科染谷隆夫教授の研究室と共同研究をスタート。同研究室が開発を進めていた高効率の有機光検出器とLTPS TFTを「世界で初めて」(JDI)集積することに成功し、今回のイメージセンサーを実現したとしている。
同社によると、TFT上への有機光検出器の形成はプロセスの温度や有機溶媒のダメージが課題だったが、100〜150℃程度の低温化および悪影響の少ない有機溶媒の使用による、低損傷プロセスを用いることでクリアしたという。製造にはLTPS TFT同様にガラス基板を用い、最終的には、はがした形でデバイス化している。
発表されたイメージセンサーは、面積は1.26×1.28cm、厚さ15μmの薄型でありながらフレキシブルで、解像度508ドット/インチ(dpi)、読み出し速度41フレーム/秒という高解像度、高速読み出しを実現。さらに波長850nmの近赤外光に対する外部量子効率も0.5以上といい、脈波の分布計測や、生体認証向けの指紋、静脈の撮像が1枚で可能という。脈波計測の精度については、CMOSイメージセンサーを用いた場合との差が5%以下だったといい、「既存のものと同等の精度が得られる」としている。
今後、ウェアラブルデバイスのほか、セキュリティ分野や向けのセンサーとしての実用化を目指していく方針といい、同社は、「生体認証において、指紋、静脈といった生体情報に加えて生体信号(脈波)を取得することで、模倣やなりすましを防止できるなど、高い安全性を有する認証システムへの適用が期待される」と強調している。
量産化に向けては、JDIのR&D本部デバイス開発部デバイス開発課課長、中村卓氏は、「LTPS TFTのガラス基板を利用した製造を検討しており、大掛かりな投資は必要ない」と説明。また、CMOSイメージセンサーなどとは異なり、大型のガラス基板上に形成する製造プロセスを用いることから、「高コストにはならないだろう」という。
さらに、有機光検出器の材料について、「材料メーカーおよび同研究室によって完成度が高まり、高い信頼性が出ている。チップと組み合わせた信頼性試験ではちょっとやそっとでは劣化が見られない、優秀な材料と考えている」とも述べている。同社は、「開発を加速し、少なくとも3年以内に製品化をしていきたい」としている。
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