東芝は、回転する角度を直接検出できる小型のジャイロセンサー(RIG:Rate Integrating Gyroscope)モジュールを開発した。
東芝は2020年1月、回転する角度を直接検出できる小型のジャイロセンサー(RIG:Rate Integrating Gyroscope)モジュールを開発したと発表した。2021年度以降のサンプル出荷を目指す。
ジャイロセンサーは、物体の向きを検出できることから、大型で高性能な製品は航空機などに、小型で安価な製品はスマートフォンなどに、それぞれ搭載されている。今回開発したRIGモジュール製品は、5cm角と小さく高精度で高速応答性を実現しており、ドローンやロボット、無人搬送車などの用途に向ける。
一般的なジャイロセンサーは、機器が回転する角速度を計測し、そのデータを演算処理することで角度を求めている。このため、応答速度や精度に課題があったという。今回開発したRIGは、「フーコーの振り子」と同じ物理的原理を用いており、機器の角度を直接検出できるのが大きな特長である。
ただ、RIG動作では検出に用いる振動子の構造を完全対称にする必要がある。ところが製造時に生じる加工誤差によって、非対称となることもあるという。そこで今回、非対称性を補正するために、独自の抵抗型可変ダンパー技術などを導入することで、完全な対称状態を実現した。
振動子も独自のドーナツマス構造にすることで、温度が変化しても対称性を保つことができ、感度への影響が極めて小さいという。具体的には、共振の非対称性Δfの温度ドリフトが1℃当たり1000万分の1以下である。
しかも、モジュールの精度を示すARW(Angular Random Walk)値は0.6deg/√Hz、ドリフトの指標となるBI(Bias Instability)は4.3deg/hを達成した。これらの数値は、同様のMEMS技術を用いた民生機器用ジャイロセンサーの性能を上回っているという。
東芝は今後、開発したジャイロセンサーの精度と応答性をさらに改善し、早期製品化を目指す。このジャイロセンサーを搭載した慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)の開発にも取り組む計画である。
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