QualcommがNXP Semiconductors(以下、NXP)の買収を断念して1年半がたった。CES 2020では、半導体数社の幹部が「買収が実現しなかったことは、どちらの会社にもそれほど大きな影響を及ぼさなかった」と話していた。
Qualcommは、NXPなしで自動車事業の拡大を進めてきたのである。
一方、NXPもQualcommなしで、接続ポートフォリオを強化してきた。NXPは2019年に、Marvell Technology GroupのWi-FiとBluetooth事業を買収した。またNXPは、高精度な位置特定が可能なUWB(超広帯域無線)を推進している。
ただし、NXPはモバイル向けの技術や大規模なAIソリューションを持っていない。
Qualcommの自動運転車プラットフォームへの積極的な進出は、NXPにとって懸念材料になるのだろうか。これに対し、NXPのオートモーティブ事業部でCTO(最高技術責任者)を務めるLars Reger氏は、「それほどでもない」と答える。「当社は、NVIDIAやQualcomm、Kalrayといった企業が巨大なAI市場で競争を繰り広げることをうれしく思うだろう」(同氏)
完全な自動運転車の市場規模は、すぐに拡大することはないとみられる。同分野に向けた強力なAIチップの競争は、決して安価ではない7nmまたは5nmのプロセス技術の適用をどの企業も望んでいるため、より一層厳しいものになると予想される。
Reger氏は、「NXPは、自動車プラットフォーム以外にも注力する計画だ」と述べている。安全性やセキュリティ、ゲートウェイからドメインコントローラーやエッジノード/センサーに至るさまざまなソリューションなどにも注力する方針とみられる。
完全な自動運転車やコネクテッドカー、モビリティのシェアリングなどの将来性について真剣に考えているなら、全く新しい“スマートシティー”の計画を始めるべきだ。
トヨタ自動車が自動運転の新しい技術を発表するのであろうと期待していた聴衆は、その考えを180度転換させられることとなった。同社社長の豊田章男氏は、CES 2020でのプレゼンテーションで自動車に言及することはほとんどなかった。
代わりに同氏は、富士山のふもとに、2000人が居住する未来的なスマートシティーを実証都市として建設するプロジェクト「Woven City」を発表したのだ。
トヨタは完全な自動運転車の夢を飛躍させ、AIが主導するスマートシティーの概念に変えたのである。トヨタのWoven Cityには、町を形成する、緑に囲まれたブロックがあり、屋根には太陽光発電パネルが敷き詰められていて、地下には水素燃料発電所などのインフラがある。
「この構想はクレイジー過ぎるか」と尋ねられたVolkswagen AutonomyのCEOであるAlexander Hitzinger氏は、「全くそう思わない」と答えている。「これはまさしくモビリティの将来像だ」(同氏)。言い換えるならば、モビリティとはA地点からB地点に行くことだけではない。自動運転車が走行する環境にまつわる全てが「モビリティ」なのだ。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.