次世代不揮発メモリの一つである抵抗変化メモリ(ReRAM)は、その大部分がまだ研究開発の段階にあるが、AI(人工知能)技術の進化で、注目が高まっている。
次世代不揮発メモリの一つである抵抗変化メモリ(ReRAM)は、その大部分がまだ研究開発の段階にある。
米国の市場調査会社Objective Analysisで主席アナリストを務めるJim Handy氏は、「技術進歩の大半は、研究開発の段階で実現される。CrossbarやWeebit Nanoをはじめ、数多くの小規模メーカーがReRAMの実用化に向けて取り組んでいる他、CEA Tech(フランス原子力・代替エネルギー庁の技術研究拠点)の研究機関であるLetiも、さまざまな研究を進めている。DRAMメーカーは、取り組みを進めながらも、急いで成果を上げたいとは考えていないようだ」と述べている。Handy氏は、Objective AnalysisとCoughlin Associatesの年次報告書「Emerging Memories Ramp Up(新興メモリの成長)」の共著者である。
同氏は、「基本的に大手メモリメーカーは、リスクを分散するために“両輪”の作戦を展開している。DRAMやNAND型フラッシュメモリが全て失速したとしても、それに取って代わるような研究努力がある程度まで進んでいるという状態を確保しておきたい考えだ。このため小規模メーカーは、大規模な実用化につながるような転機を迎えられるかどうかを見極めるべく、研究開発に資金を投じている」と述べる。
ReRAMをシナプスに用いてニューラルネットワークを作り出す研究も行われており、新型メモリ分野では、ReRAMの性能に対する興味が高まる一方だ。Handy氏は、「ニューラルマップについては、これまで長年にわたり話題に取り上げられてきたが、実際に何らかの製品として実用化されることはなかった。しかし、一般的なフラッシュメモリをベースとしたニューラルネットワークを実現できるのではないかという見解もあるため、もしそれが可能であれば、ReRAM開発が中止になる可能性がある」と述べている。
Letiは、2019年12月に開催された「IEDM 2019」において、研究成果を発表し、生体模倣による完全統合型のニューラルネットワークの構築方法について、概要を明らかにした。ReRAMベースのシナプスとアナログスパイキングニューロンを組み合わせることにより、正式なコーディングを使用した同等レベルのチップと比べて、エネルギー使用量を5分の1に削減することに成功したという。このニューラルネットワーク実装では、シナプスをニューロンの近くに配置したことで、シナプス電流を直接統合することが可能になった。
ReRAMメーカーであるCrossbarは2019年1月に、他のメーカー各社と共同で、高性能な省電力AIプラットフォームの実現を目指すAIコンソーシアム「SCAiLE(SCalable AI for Learning at the Edge)」を設立した。このSCAiLEは、ReRAMを、高性能アクセラレーションハードウェア、最適化されたニューラルネットワークと組み合わせることにより、電力効率が高く、すぐに使用可能なソリューションを開発することを目指している。
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