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5G 人からモノへ 〜「未踏の時代」迎えた無線技術 特集

MWCで聞きたかった、モバイル業界への7つの質問“普遍的な”5Gスマートフォンの登場は?(1/3 ページ)

「“普遍的な”5Gスマートフォンはいつ登場するのか?」「ミリ波5Gを真に促進するのは、どんなアプリケーションか?」――中止となったMWCで答えを得るはずだった、モバイル業界への7つの質問。

» 2020年03月03日 11時30分 公開
[Junko YoshidaEE Times]

 「Mobile World Congress(MWC) 2020」の中止を受けて、バルセロナは不気味なほど静かだ。

例年MWCの時期は参加者たちでごった返すランブラス通り。「こんなに人がいないのを見たことがない」(筆者)

 2020年2月にGSMAがMWCを中止したことで、展示会で直接会うアポは全て白紙になった。加えて、電話インタビューという形で準備していた展示会に先立つプレブリーフィングも、全てキャンセルされた。

 MWCという絶好の機会を狙った発表は、おそらく全て“延期”されたことになる。しかし計画していた製品発表がどのように再調整されていて、今後いつ、どこで行われるのかについて答えられる状態にある企業は1つもない(Huaweiについては2020年2月24日、折り畳みスマートフォンの最新バージョンである「Mate Xs」を発表しているが)。

 ただ、MWCの中止によって、モバイル業界の機能が停止してしまったという訳ではないことは明らかだ。メディアやアナリストの関心が枯渇してしまった訳でもない。同業界はいまだ5G(第5世代移動通信)展開の初期段階にあり、仕様、機能、設計そしてスマートフォンアプリが進歩を続けていることを踏まえると、モバイル業界に対する注目は全く失われていないといえる。

 MWCが開催されていれば容易に答えを得られていたはずの質問があるのだが、もはや一か所で同時に全ての答えを集めることはできなくなってしまった。それらの質問を下記に挙げる。

1.“普遍的な”5Gスマートフォンはいつ登場するのか?

 現在、ミリ波を用いたネットワークに対応する5Gスマートフォンはあるが、これは周波数帯域がサブ6GHzのネットワークでは機能しない。

 Qualcommが2019年12月に開催した「Snapdragon Tech Summit」において、同社プレジデントのCristiano Amon氏は「真の5Gとは、サブ6GHzとミリ波を組み合わせたものであり、それは世界規模で展開されるようになる」と述べている。その上で同氏は、サブ6GHzとミリ波の両方に対応するスマートフォンの登場は2020年第1四半期末になる、と業界が見込んでいることに言及した。

 普遍的な5Gスマートフォンを初めて立ち上げるのはどのメーカーか、を知る手掛かりは、MWCで得られるはずだった。

2.どんなアプリケーションが、ミリ波5Gを真に促進するようになるか?

 特に米国市場では、一部の無線事業者は24GHzを超える非常に高い帯域を用いている。(ミリ波帯にある)これらの信号には、伝送距離が限られているというデメリットがある一方、メリットとしては最大のダウンリンク速度を実現できることが挙げられる。

 基地局の近くにいる場合であればセルラー通信の最高速度は1〜3Gビット/秒で、米国における現在の一般的な4G接続より約30〜80倍速いということが報告されている。これは、現時点で最も性能の高い家庭用ブロードバンドと同等か、それ以上の速度だ。一方でQualcommとSamsung Electronicsはそれぞれ、自社製の最新5Gモデムのミリ波帯での最高速度が7Gビット/秒以上に達するとしている。

 良いことばかりのように聞こえるが、実際のところ、誰がどんなことをするためにこれほどの速度を必要とするのだろうか。

 フランスの市場調査会社Yole Développement(以下、Yole)でPower&Wireless Divisionのディレクターを務めるClaire Troadec氏は、EE Timesに対し、「ミリ波はB2B(Business to Business)での利用が予想されるが、どのように利用されるかは定かではない」と語っている。

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