2019年のMWCでは、折り畳み式の携帯端末が大流行していた。この他にも、近年みられる新たな傾向としては、ベゼル(額縁)レス/ベゼルフリーのスマートフォンが挙げられる。ベゼル部分が少なければ、ディスプレイが大きくなるというメリットがある。
このような表面的な変化など、誰も気にしないのではないかと思うかもしれない。しかし、気にするべきである。MWCで披露されるさまざまな新世代スマートフォンの新しい形状や、意匠設計、光沢のある物体的特徴などは、特定の半導体チップやコンポーネントに対する新たな需要を引き起こすのだ。
例えば、スマートフォンシステム開発メーカーは数年前から、ディスプレイの大型化を追求するに当たり、スマートフォン本体の前面にボタンを配置するのをやめ、ディスプレイの底面に指紋認証センサーを埋め込むようになった。一方、Appleは2017年に、Structured Light方式を採用した顔認証用3D(3次元)フロントカメラを開発している。
MWC 2019が、折り畳み式携帯端末一色だったとするなら、MWC 2020の次世代スマートフォン関連の最新トレンドは、どのようになっていたのだろうか。
YoleのPierre Cambou氏は、「スマートフォンに搭載される3Dセンサーの急激な増加傾向は、既に2019年から見られていた。これらの3Dセンサーは、Structured Light方式ではなく、ToF(Time of Flight)カメラをベースとしている。ToFセンサーは通常、Appleが適用したStructured Light方式と比べると複雑性がはるかに低く、直射日光下でも信頼性に優れるうえ、計算処理も少なくて済む」と説明する。
*)編集注:Appleは、Structured Light方式を別の手法で置き換えることを検討中で、それがToFである可能性が高いと報じられている。
Huaweiは既に、Structured Light方式からToFへの移行段階を超えて、ToFセンサーの配置をフロントカメラからリアカメラに切り替えており、Cambou氏の見解が誤りであることを実証している。
多くのアナリストたちは当初、「スマートフォンを使ったAR(拡張現実)ゲームや3D測定が次々と登場したように、3Dカメラアプリケーションは、認証やセキュリティの分野で使われるようになるだろう」と予測していた。
業界では、ToFセンサーでAR/VR(仮想現実)アプリケーションを実現するという果てしない展望を掲げているが、その流れを一変させたのがHuaweiだ。同社は、ToFリアビューカメラによって立体情報を生成し、画像品質を劇的に向上させたのである。例えば、3DカメラでスマートフォンのAI(人工知能)ソフトウェアにデータを送信し、画像の背景の焦点をぼかすことができる機能「bokeh blur」などは、プロのポートレート写真家が好んで使っている。
スマートフォンメーカー各社がMWC 2020で披露したであろう、新型スマートフォンで実現可能な新しいアプリケーションについては、まだ何も分かっていない。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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