米国のベンチャーキャピタル(VC)Pegasus Tech Venturesの創設者兼CEOを務めるAnis Uzzaman(アニス・ウッザマン)氏は、日本に留学していたこともある人物だ。世界中のさまざまなスタートアップを知るUzzaman氏は、日本のスタートアップの実力、そしてスタートアップ投資に対する日本企業の姿勢をどう見ているのだろうか。
Pegasus Tech Ventures(以下、Pegasus)は、米国カリフォルニア州サンノゼに拠点を置くベンチャーキャピタル(以下、VC)だ。日本企業をはじめ、世界の大手事業会社とファンドを設立し、約1600億円の資金を運用してハイテク系スタートアップなどに投資を行っている。
Pegasusの創業者でCEOを務めるAnis Uzzaman(アニス・ウッザマン)氏は、東京工業大学(東工大)に奨学生として日本に留学していたこともある人物だ。そのようなバックグラウンドから、Pegasusは日本に積極的に投資を行っている。世界中のさまざまなスタートアップを知るUzzaman氏は、日本のスタートアップの実力、そしてスタートアップ投資に対する日本企業の姿勢をどう見ているのだろうか。
――東工大の開発システム工学科を卒業し、東京都立大学(現、首都大学東京)工学部情報通信学科にて博士号も取得されています。エンジニアのバックグラウンドをお持ちですが、VC設立に至った経緯をお聞かせください。
Anis Uzzaman氏 東工大を卒業した後、いったん米国に戻り、修士号を取得してIBMに就職した。当初はエンジニアとして採用されたが、そのうちM&Aや事業開発、マーケティングなどに携わるようになっていった。その後に務めたCadence Design Systemsでも事業開発の仕事を行った。その過程で多くのスタートアップと接するうちに、大手企業というのは、スタートアップと組むことで、新しいアイデアを取り入れたり、新しいビジネスモデルやコンセプトを教えてもらったり、自社の製品や技術を磨くことができると気付いた。それと同じような仕組みを活用できる組織を作りたいと考え、行き着いたのがVCの設立だった。
――Pegasusの、VCとしての仕組みを教えてください。
Uzzaman氏 通常のVCは、金融機関や保険会社などの機関投資家から資金を集めてベンチャーに投資する。Pegasusの場合は、大手事業会社とプライベートファンド(二人組合)を設立し、そのファンドの資金をベンチャーに投資している点が、他とは異なっている。そのため、Pegasusの資金のほぼ100%が事業会社からきている。
実は今、この方法がCVC(Corporate Venture Capital)の“最先端のやり方”として人気がある。CVCは、事業会社が、新規事業開拓あるいは自社とシナジーを生むために、ベンチャー企業に対して投資を行うためのファンドだ。CVCは、その事業会社の自己資金で組成される。
日本の企業がCVCを本格的に運営し始めたのは1980年代からで、これまで主に3つのCVC運営タイプが生まれてきた。ただ、どの運営タイプにも、事業会社が思い通りにベンチャーに投資できなかったり、CVC側にそもそもファンドマネジメントの知識がなかったり、事業会社の色が強過ぎてベンチャー側がパートナーシップの提携に消極的だったりといった課題があった。
Pegasusの仕組みは、上記全ての課題を解決する4番目のCVC運営タイプということで、「CVC4.0」と呼ばれる。
Pegasusは現在、35社のパートナー(=Pegasusに投資をしている事業会社)がいて、そのうち20社が日本企業だ。アイシン精機、双日、セガサミーホールディングス、清水建設、朝日放送ホールディングス、CAC、ASUS、Acerなどがパートナーの一例だ。運用資金の総額は約1600億円で、約170社のベンチャーに投資をしている。現在は25個のファンドを運用していて、そのうち21個がプライベートファンドとなっている。従業員は105人で、全員がファンドやスタートアップ投資関連のエキスパートだ。
――35社のパートナーのうち、20社が日本企業ということですが、戦略的に日本への投資を多くしているのですか?
Uzzaman氏 中国やインドに拠点を置くという話もあったが、私自身が日本の大学に留学していたこともあり、日本に強いコネクションがある。そこで、日本に積極的に投資をしようと考えた。日本をベースに、アジア各国に投資をしているVCはあまりない。そういう意味で、われわれの立ち位置はユニークだ。
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