図3はディスプレイの折り畳み部の様子(一部加工済み)である。
折り畳み型のOLED(有機ELディスプレイ)の裏面には開いた状態と閉じた状態で形状が変わる金属ネットがあり、折れ曲がり部を背後から支えている。この支えが強度を上げ、同時に画面の開閉をシャープ(きっちりしたという意味で)なものにしている。
本体側は図3右側のような金属ヒンジできっちりと支えられている。この部分には多くのノウハウや工夫があるようだ。分解後にヒンジを高所から落としたり、無理やり曲げてみたり試みたが全くの無傷であった。実際のヒンジを見たい人もいるだろう。弊社では現在、オフィス入口にGalaxy Flipのヒンジを展示しているので、お越しの方はぜひ手に取って開閉してみてほしい。
折り畳み型スマートフォンに対する悪評をネット上ではたくさん見る。SNSなどでも悪口のオンパレードだ。しかし、新しいことへのチャレンジには、問題や課題があるのは当然である。そうしたチャレンジを通じ課題が抽出され、改善や改良が生まれる。その繰り返しの中から、やがて、“唯一無二”のような卓越した技術が生まれるのではないだろうか。筆者は、Galaxy Flipに使われるヒンジを非常に優れたものだと思っている。このヒンジをヒンジの専門家や工務などに関わる人に見てもらったが、みな絶賛していた!
「Galaxy Flipは値段が高い」とか、「折り畳み式は普及しない」とか、多くの人から聞かれる意見は重要なものだと思う一方で、新たな取り組みが続けられることの「利点」について語る人が少ないことに違和感を覚えることも多い。Samsungらは、新たな土壌作りに励んでいると考えてはいかがだろう。
折り畳み型スマートフォンに何度も失敗しても、挑み続けることで、その取り組みの中から次世代を切り開く新たな土壌が生成されているはずだ。その一例がヒンジや支え金属なのかもしれない。これらの技術は別の分野にも応用が利くことは間違いない。
図4は、2019年の折り畳み型スマートフォンであるGalaxy Fold(図左)と今回報告対象のGalaxy Flip(図右)の大まかな差である。
基本構成、構造(部品構造)は同じだが、縦横のサイズ差があるので、部品の大きさや長さが大きく異なっている。
横開き、縦開き、両者ともに分解前に実際に使ってみたが、どちらもさらに薄くなれば非常に使い勝手の良いものだと感じた。こうした取り組みが絶えることなく続けられ、いつか4つ折りスマートフォンなどが出てくれば面白いだろうと感じた。いずれにしてもせっかく生まれたものなのでぜひ今後の進展を期待したいジャンルである。
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