米Georgia Institute of Technology(ジョージア工科大学)機械工学部が主導する開発チームが、室温での表面活性化接合(SAB)をベースとして、GaNと単結晶ダイヤモンドを別の中間層と接合するという成果を発表した。
次世代パワー半導体の材料の一つであるGaN(窒化ガリウム)。現在、GaNを他の材料と組み合わせることによって、その性能をさらに高めようと、競争が過熱している。
フランスの市場調査会社Yole Développementの技術市場アナリストであるEzgi Dogmus氏は、「GaN-on-Diamondは、デバイスおよびシステムレベルにおいて、高い熱伝導率や電気抵抗率、小型のフォームファクタを実現するための主要なパラメータを提供する。こうしたメリットから、GaN-on-Diamondパワーアンプ機器は、商用基地局や軍用レーダー、衛星通信、気象レーダーなどの高性能RF用途向けとして、非常に魅力的な存在となっている。過去10年超にわたって開発されてきたこの革新的なデバイス技術は、今後数年の間に、RFHICやAkash Systems、三菱電機などのリーダー企業によって実用化される見込みだ」と述べている。
米Georgia Institute of Technology(ジョージア工科大学)機械工学部が主導する開発チームが、室温での表面活性化接合(SAB)をベースとして、GaNと単結晶ダイヤモンドを別の中間層と接合するという成果を発表した。新しく開発されたこの技術は、GaNの性能を最大化し、さらなる高電力を実現することができるという。
GaNを他の材料と組み合わせることは、技術的に簡単ではない。ダイヤモンドとGaNを中間層で接合するには、その中間層へのストレスも低減しなければならず、非常に難しい。今回の新しい接合技術では、GaNデバイスが、単結晶ダイヤモンドの高い熱伝導性を最大限に活用して優れた冷却効果を実現することができる。
パワーエレクトロニクス業界は、Si(シリコン)-MOSFETから、次世代の材料への移行を迫られている。ワイドバンドギャップ半導体であるGaNをベースとしたHEMT(高電子移動度トランジスタ)は、その優れた電気的特性から、高圧/高周波スイッチングのモーター制御用途向けとして、MOSFETやIGBTの後継として開発が進んでいる。
GaNデバイスは、オプトエレクトロニクスやRF、自動車などの分野で幅広く導入されている。現在のところ、GaN-on-Diamond関連の市場としては、防衛レーダーや衛星通信などが挙げられる他、5G(第5世代移動通信)基地局向けの量産も進められている。
GaNの性能と信頼性は、チャネル上の温度やジュール加熱効果に関連性がある。SiCやダイヤモンドの基板をGaNに統合することにより、熱管理が向上するため、デバイスの動作温度を下げることが可能になる。GaN-on-SiCデバイスの場合、チャネル温度が25℃下がると、デバイスの寿命が約10倍長くなる。
ダイヤモンドのバンドギャップは5.47eVで、破壊電界が10MV/cm、電子移動度が3800cm2/Vs(正孔)、熱伝導率が22W/cmKである。Siと比べて熱伝導率は約14倍高く、絶縁破壊電界は30倍以上高い。
今回の新しい技術は、ジョージア工科大学と明星大学、早稲田大学から集まった研究チームによって開発された。熱伝導率の高い材料を、GaNの活性領域に、より近づけて配置できるので、高出力動作に向けてGaNの性能を最大限に引き出せるようになるとする。
GaN-HEMTでは、チャネル基板の温度が高くなって出力が制限されてしまうことがあり、それがシステム性能および信頼性の低下を引き起こす要因となっている。ダイヤモンドは現在、熱伝導率が最も高い材料であるため、GaNと統合した場合、チャネル近辺で生成された熱を放散させることが可能になる。
ジョージア工科大学、明星大学、早稲田大学の研究チームが発表した研究では、改善した2種類のSAB技術を用いて、GaNとダイヤモンド基板を室温で接合するというもの。接合する面を洗浄してArイオンビームで活性化し、ダングリングボンド(未結合手)を発生させる。その後、室温で2つの表面をプレスする。ダングリングボンドは界面で共有結合を形成するという。同研究チームでは、結合を強化するために、界面にシリコン原子を添加している。
この方法により、GaNとダイヤモンド基板間の層の厚みがわずか4nm程度となり、既存のGaN-on-diamondのHEMTに比べ、熱伝導の性能が2倍以上に向上するとしている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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